香草を塩に変える朝

王宮庭園の香草は、摘んだ日の夕方には萎れた。

宴会が雨で三日延期され、料理長アデルは青ざめる。

「肉料理二百皿分だ。新しい葉が育つまで十日かかる」

隣国の使節を迎える献立は、香草焼きの羊と決まっていた。変更すれば食材を用意できなかったと知られ、王国の面子が潰れる。

副料理長は庭師の責任だと言い、見習いの鈴を解雇して損失の形だけ整えようとした。

庭師見習いの風間鈴は、雨が落ちる前に葉を摘み集めた。

水気を布で拭き、茎を外して細かく刻む。同じ重さの粗塩と混ぜ、緑の汁を塩粒へ揉み込み、石板の上へ薄く広げた。

一か所に山を作らず、指の間が透ける厚さにする。

厨房の火から離れた、風の通る回廊で一晩乾かした。

「緑の葉を塩まみれにしただけだ」

副料理長は皆の前で鼻で笑った。

翌朝、葉はぱりりと砕け、塩粒が淡い緑に染まっていた。

鈴が指で揉むと、庭で枝を折った時と同じ鋭い香りが立つ。

副料理長が水へ挿して保存した葉は、縁から黒ずみ、青臭い水を垂らしていた。肉へ載せれば焦げ、匂いを失う。

延期された宴の夜、使節が見守る前でアデルは羊肉へ緑の塩を一つまみ振った。

鉄板へ触れた瞬間、熱で香草の香りが蘇り、脂の甘さを引き締める。塩粒が溶けるため葉の焦げは残らず、白い皿に緑の粉が薄く光った。刻んだ生葉のように皿の上で黒くならず、二百皿すべて同じ塩加減になった。

給仕の戻ってくる皿には、骨しか残っていない。

隣国の使節は二百皿目まで香りが同じだと驚き、残った塩を土産に求めた。

国王は香草の姿がないのに香る肉を不思議がり、塩壺を持って来させた。一つまみ舐め、すぐ狩猟遠征用にも欲しいと言う。副料理長が解雇状を隠す暇もなかった。

乾いた壺一つで生葉五十束分。重さは十分の一で、雨にも潰れない。三月前の試作品も香りを保っていた。

アデルは鈴の庭師札を外し、調味料庫の金鍵を渡した。

「王宮の香草は今後、半分をこの塩にする。まず宴会用百壺、正式に注文する」