AIが私を最高評価

人事評価の日、朽網莉央の画面には見たことのない文字が出た。

〈総合評価 SSS〉

〈代替困難性 最高〉

〈昇進推奨 即時〉

莉央は静かに立ち上がった。

「会社が、ようやく私を正しく測った」

同僚が画面を見る。

「Sの上ってあるんだ」

「私が作った」

「システムが?」

「存在が評価基準を超えたの」

課長を会議室へ呼んだ。

「AIは私を即時昇進させるべきだと」

課長は困った顔をする。

「私はまだ評価結果を受け取っていない」

「人間の判断がAIより遅れています」

「昨日、入力した自己評価は?」

「“部門の未来を一人で支えた”」

「かなり強めだな」

「AIは事実と認定しました」

莉央は待遇交渉を始めた。

「役職は部長以上」

「現在は主任だ」

「代替困難性が最高です」

「休暇中、業務は回っていた」

「組織が私なしでも動くよう設計した成果です」

「何を言っても強みに変えるな」

「最強人材の特性です」

人事部も集まり、画面を撮影した。

「新評価システム初のSSSだ」

「成功事例として社内報へ」

莉央は腕を組む。

「顔写真は右側から」

「もう取材を受ける気?」

「最高評価には説明責任があります」

研修会まで開かれた。

「AIに評価される秘訣は?」と後輩。

「成果を遠慮なく言語化すること」

「“売上を支援した”程度では?」

「“市場の成立を可能にした”と言い換える」

「同じ仕事ですか」

「視座が違う」

「誇張では?」

「AIはSSSを出した」

そこへシステム開発者が駆け込んだ。

「すみません。皆さん、評価画面を閉じてください」

課長が尋ねる。

「不具合か?」

「本番公開前のデモ画面です。評価結果を確認しやすいよう、全項目を最高値へ固定しています」

莉央は固まった。

「私の実績データは?」

「まだ読み込んでいません」

「代替困難性は?」

「例文です」

「即時昇進は?」

「表示テストです」

隣の会議室から歓声が聞こえた。

新人も、清掃責任者も、社長も、全員SSSだった。

莉央は席へ戻り、正式評価を開いた。

〈総合評価 B〉

AIは彼女を、問題なく代替可能な通常画面へ戻した。