やさしい嘘の肉

ドネルの身体は、これまで聞いた嘘の数だけ膨らんでいた。

「すぐ治る」「痛くない」「全員無事だ」——戦場で浴びた慰めが黒い肉となり、肩から背中へ盛り上がっている。あと一つ嘘を聞けば、頭まで覆われ、虚言を食う魔物になる。

廃屋の隅で、ズィマルは短剣を握ったまま座っていた。

呪いを移す方法は一つ。宿主が心の底から信じた嘘だけが、積もった肉を話し手へ返す。だがドネルは、仲間の言葉を疑う癖がある。とりわけズィマルは嘘が下手だった。

「俺を殺せ」

肉の隙間からドネルが言った。

「嫌だ」

「それは本当だな」

黒い肉がまた脈打つ。真実では剥がれない。

ズィマルは短剣を床へ置いた。

「おまえを助けたいと思っている」

「知ってる」

「一緒に帰るつもりだ」

「それも本当だ」

時間がない。窓の外では、討伐隊の松明が近づいていた。彼らは魔物になりかけた者ごと家を焼く。

ズィマルは胸の奥で、一番口にしたくない言葉を選んだ。

「俺は、おまえを仲間だと思ったことがない」

ドネルの瞳が揺れた。肉は動かない。まだ信じていない。

ズィマルは続けた。

「おまえを連れていたのは盾にするためだ。傷を負うたび、次はもっと前を歩かせようと思った。故郷の話も、妹の話も、全部退屈だった」

一つずつ、共有した時間を汚していく。ドネルの顔から抵抗が消えた。

「では、あの夜、俺を背負って逃げたのも」

「荷物を置く場所がなかっただけだ」

最後の嘘だった。

ドネルが目を伏せ、「そうか」と信じた。

黒い肉が一斉に剥がれた。濁流のように床を渡り、ズィマルの脚へまとわりつく。骨を包み、背骨を伸ばし、顎を前へ押し出した。

ドネルは人の身体で倒れた。ズィマルは四つ脚になり、天井へ角を擦った。人の舌は黒い肉の下へ沈み、言い直す機会を奪われる。

討伐隊が扉を破る。

ドネルは彼を庇って叫んだ。

「待て! そいつはズィマルだ。俺の仲間だ!」

魔物はその音へ首を傾けた。

ズィマルという名が、もう自分を指すとは分からない。ただ、泣いている人間の喉が温かそうだと思った。口の中に増えた牙の間で、最後まで守った真実だけが、噛み砕かれる音を立てていた。