世界の収穫日は農民が決める

農夫ソルヴァは、皇帝の《世界畑》を四十年耕してきた。

各国から奪った土を一か所へ集め、世界樹の根へ麦を植える巨大農園だ。皇帝は収穫を神へ捧げれば永遠の王になれると語った。だが水を運び、病葉を摘み、飢えた年にも種を守った農民の名は、記録の一行にもなかった。

ソルヴァの技能は、生涯に一度しか使えない。

【大収穫:一年以上自ら世話したものを、最も実った形で収穫し、その実りを育てた者全員へ等分する。対象の種類と規模は問わない】

四十年目の収穫祭、世界樹の上に黄金の穂が現れた。

一本の穂には海、山、魔力、寿命、国々の土地が粒となって詰まっている。皇帝は農民を広場へ縛り、自分一人で食べれば世界の所有者になれると笑った。

天から収穫神まで降りてきた。

「人は土を耕す道具。実りは王と神のものだ」

黄金の鎌が振り上げられる。穂が刈られれば、世界中の畑は枯れ、民の寿命も皇帝へ集まる。

ソルヴァは泥のついた手で世界樹の根に触れた。

世話をしたのは皇帝でも神でもない。水路を掘った者、種を選んだ者、夜通し霜を防いだ者、収穫を次の村へ運んだ者。名もない何百万人が、この実りを育てた。

「収穫日は、育てた者が決める」

彼は生涯一度の技能を使った。

神の鎌が届くより先に、黄金の穂が自ら頭を垂れた。無数の粒が光となって世界中へ飛ぶ。干上がった村には水の粒、奪われた国には土地の粒、老いた労働者には寿命の粒。実りは働いた者一人一人へ等しく戻った。

皇帝の掌へ落ちたのは一粒だけだった。それも四十年間に一度、見物のため土へ触れた分にすぎない。神の皿には何も落ちなかった。

世界樹から力を吸えなくなった玉座は崩れ、農民を縛る鎖が麦わらのようにほどける。各地で枯れた畑が青くなり、人々の職業欄から《皇帝所有》の文字が消えた。

ソルヴァは自分の一粒を割り、半分を来年の種として土へ戻した。

世界中で同じ時刻に、空だった食卓へ一粒ずつ光が降りた。誰かが独占すれば消えるが、分ければ翌年の種になる実りだった。皇帝も神も、その仕組みだけは変えられない。広場の農民たちは鎖を踏み越え、ソルヴァが土へ戻した半粒の周りへ新しい畝を作った。

《職業が【農夫】から【世界耕作主】へ書き換わりました》