世界級という最初の一人
柏木奏多が冒険者登録台へ立ったとき、試験場にはS級冒険者が七人そろっていた。
年に一度の公開試験。水晶柱は筋力、魔力、技能、将来性を順に映す。奏多の欄だけはすべて空白だった。
「能力なし。最低のF級にさえ空きはない。世界のどこへ行っても、お前を冒険者とは呼ばん」
総試験長が宣告し、登録台帳を閉じた。
奏多には、閉じた表紙の上へ一つの入力欄が見えていた。
《資格創造》
世界にまだ存在しない資格一つを、条件とともに一度だけ成立させる。
自分だけが強くなる資格も作れる。王より偉い資格、報酬を独占する資格、不死になる資格。けれど奏多は、召喚されてから街で見たものを思い出した。
等級不足で救助依頼を断られた村人。
報酬がないため放置された魔物被害。
国境を越える許可が下りず、家族を助けに行けない冒険者。
彼は台帳の表紙へ指で書いた。
《資格名・世界級冒険者》
《条件・助けを求める声を、地位、国境、報酬より優先できること》
《権限・世界そのものから依頼を受領する》
《定員・条件を満たす者すべて》
総試験長が嘲笑する。
「子どもの理想を、規則が聞くものか」
奏多は《資格創造》を使った。
世界中の鐘が鳴った。
試験場の床から青い光が噴き上がり、閉じていた台帳がひとりでに開く。F、E、D、C、B、A、S。そのさらに上ではなく、階級の外側へ新しい頁が生まれた。
最初の登録者欄に《柏木奏多》。
同時に、通信水晶へ各地の光景が映る。火山島、雪原、砂漠、魔族領、海底都市。すべてのギルド台帳に同じ頁が現れ、拒否されていた救助依頼が青い星となって空へ上がる。その星々は奏多の冒険者証へ集まり、彼を待つ道として世界地図に灯った。
七人のS級証が一斉に震える。
最初に、老いた剣聖が立ち上がった。自分の証を外し、青い頁への参加を申請する。聖女、竜騎士、賢者も続いた。遠隔水晶の向こうでは、各国のギルド長が次々と席を立つ。
最後まで座っていた総試験長の机へ、世界から一通の依頼が届いた。
《依頼・最初の一歩》
《指名・世界級冒険者、柏木奏多》
世界のどこでも呼ばないと断じられた名前を、今度は世界そのものが呼んでいた。