二十番目の窓
情報管理職の最終面接には、十九人が参加すると案内されていた。
候補者一人、面接官五人、各部署の見学者十三人。だが接続すると、画面には二十個の窓があった。
余分な一つは「Guest」。誰も紹介しない。
面接課題は、架空の情報漏洩への対応だった。
私はまずGuestの身元確認を求めた。
採用部長は苛立った。
「課題に集中してください。見学者の一人です」
「見学者一覧にはありません」
「細かすぎる。実務では速度も必要だ」
私は評価票に「判断が遅い」と書かれるのを見た。
説明を続ける間、Guestが共有フォルダへアクセスした通知が出た。
面接用の質問集、候補者一覧、履歴書フォルダ。権限は閲覧だけのはずなのに、履歴書の一つがダウンロードされる。
私は発表を中断し、会議をロックするよう求めた。
採用部長は拒んだ。
「演出です。反応を見る試験だ」
他の面接官も、それなら事前に聞いていないとざわめいた。
私はアクセス履歴を共有した。
Guestの招待元は採用部長の個人アカウント。リンクは昨夜、公開設定のファイル転送サービスから送られている。演習用のセキュリティ試験なら、社内申請番号が必要だが、どこにもない。
さらにGuestの外部ドメインは、候補者情報を売買して処分歴のある仲介業者だった。
採用部長は、私が面接を混乱させたとして不採用を宣言した。
その瞬間、Guestが退出し、履歴書フォルダの共有設定が「リンクを知る全員」に変わった。
私が指摘した通り、実害が発生した。
人事役員が採用部長の主催権限を奪い、設定を戻した。
会議予約の備考には、部長が書いた《候補者リスト提供の謝礼確認》が残っていた。メールのBCCにも仲介業者のアドレスがある。
ダウンロードされた履歴書には、私が事前に埋め込んだ閲覧通知が反応していた。転送先は仲介業者の共有庫。私が面接中に警告した時刻より三十秒後で、部長が「演出」と言った時点でも漏洩は続いていた。
人事役員は私の評価票を開いた。
《判断が遅い》を削除し、《唯一、二十番目を数えた》と入力する。
「不採用を撤回します」
採用部長の窓が閉じられた。
「次の面接はありません。情報管理職として、採用です」