低評価が世界を救う

《灰原カナメ、低評価二百万の炎上者》

《人気配信者を助けて禊ぎに使う気か》

《喝采王は好感度を食って強くなる。お前が行っても無駄》

 王冠深層で、最高位パーティー《皇レンジャーズ》が跪いていた。

 ボス・喝采王の鎖は、称賛を受ける者ほど重くなる。救助に入った著名配信者も次々と捕らえられ、画面に流れる応援がそのまま王の力へ変わっていた。

 灰原カナメの名前の横には、二百万件の低評価。

 半年前の捏造告発は訂正されても、数字だけは残り続けている。

 彼女は王の前へ一人で立った。

《カナメへの応援コメントを書くな、王が吸う》

《低評価しかない配信者でも攻撃は通らない》

《鎖が皇レンジャーズの生命を削ってる。残り三十秒》

 カナメは配信画面に現れた【すべての評価を受け入れる】を一度だけ押した。

 二百万の黒い印が、彼女の背へ流れ込む。

 喝采王が歓喜して口を開いた。だが吸い込んだ瞬間、金色の身体へ黒い亀裂が走る。

 カナメの技能《評価反転》。自分へ向けられた否定を、誰かを救うときだけ肯定の力へ裏返す。低評価一つにつき、鎖が一本ほどける。二百万本の光が深層を満たし、捕らわれた全員の拘束が砕けた。

 余った光は王冠を貫く。喝采王は一度も攻撃されないまま、空の玉座へ崩れ落ちた。

《全救助対象の生命値、最大まで回復》

《喝采王の強化値ゼロ。低評価は称賛として吸収できない》

《第三者調査結果:半年前の告発映像は合成。投稿者も認めた》

《カナメは訂正後も、低評価を消さず救助用に残してたのか》

 皇レンジャーズの隊長が立ち上がり、カナメへ剣を捧げた。

「世界一嫌われた数字に、我々は救われた」

 カナメは剣を受け取らない。

「嫌われたかったわけじゃない。消せなかったから、使い道を決めただけです」

《強い》

《低評価を押した側だけど、取り消していいか》

《救助完了。深層生存者四十七人》

《急上昇の切り抜き、題名が変わった》

 半年前から彼女を縛っていた炎上動画の文字が、光の中で更新された。

【『低評価二百万の嘘つき配信者』→『低評価二百万で四十七人と世界最強パーティーを救った配信者』】