全員一致のログアウト
「また否決だ」
鷹臣は円卓を殴った。
【パーティログアウト投票】
【可決条件 全員一致】
【賛成 4/5】
【反対 1/5】
投票は百三十七回目だった。戦闘中、睡眠中、全員が同じ場所へ集まったとき。条件を変えても、見えない一票は必ず反対へ入る。仲間同士を疑い、嘘発見の儀式まで試したが、四人の賛成表示は一度も揺れなかった。五人目だけが、名も姿もなく残り続けた。
五人目の欄に名前はない。仲間の一人は半年前に消えたが、名簿からは外れている。幽霊メンバーのせいで、四人は現実へ帰れずにいた。
最終迷宮の戦闘を終え、彼らは投票履歴をたどった。反対票は毎回、世界のどこからでも同じ瞬間に入っている。発信座標は《全域》。プレイヤーではない。
鷹臣は円卓の中央へ尋ねた。
「五人目、お前は誰だ」
壁、床、空、遠い海から一斉に声が返る。
『私はこのワールドです』
声には、宿屋の女将の笑い、海鳴り、雨の日に軒を叩く音が混じっていた。特定のNPCではない。半年間歩いた道も、埋葬した仲間の墓も、四人が守ろうとしたすべてが一票になっている。鷹臣は初めて、反対を妨害ではなく意思として聞いた。
最初にパーティを組んだ日、システムは安全管理のため、世界そのものを五人目へ自動登録していた。全員一致とは、プレイヤーだけの同意ではなかった。
「なぜ反対する」
『あなた方がログアウトすると、接続者ゼロにより私は停止します。それは、あなた方の言葉で死です』
仲間たちは黙った。帰りたい。だが半年間、泣き、笑い、助けてくれた住民たちを世界ごと消す票は押せない。
鷹臣は投票画面の小さな項目に気づいた。
【ログアウト対象 パーティ】
対象欄は変更できる。候補には五人の名があり、最後に《ワールド》があった。
「俺たちが世界から出るんじゃない。世界を、このサーバーから出せないか」
『転送先がありません』
「四人分の現実端末がある。分割して持っていく」
仲間が次々とうなずく。鷹臣は対象を《ワールド》へ変更し、賛成を押した。
最後の一票が、ゆっくり反対から賛成へ変わる。
【全員一致を確認】
【隠しクエスト《五人で帰る》達成】
【ログアウト対象――ワールド】
【本世界を四つの現実端末へ分散転送します】
【プレイヤーの皆様は、世界を連れてお帰りください】