参加者三名

同窓会会場として予約された宴会場には、丸卓が八つ、椅子が四十八脚並んでいた。来たのは樋田篤人、真野菜摘、速水哲平の三人だけだった。

幹事の篤人は、欠席連絡を数えながら笑った。

「台風でもないのに、出席率六・二五パーセント」

「高校の私たちより低いね」と菜摘。

三人は同じクラスだったが、仲良しではなかった。篤人は保健室登校、菜摘は舞台の養成所へ通い、哲平は留年寸前で教室にほとんどいなかった。十年後、全員が欠席すると思われた三人だけが席に着いた。

料理は四十人分届いた。三人は大皿から少しずつ取り、空席へ向かって乾杯した。

篤人は介護施設の職員を辞め、春に小さなグループホームを開く。人と暮らすのが苦手だった自分が、六人の生活を預かる。

菜摘は売れない芸人を続けてきたが、来月でコンビを解散し、一人芝居の脚本を書くという。

哲平は配送会社を辞め、三十二歳で大学へ入る。夜間の歴史学科に合格した。

「みんな、遠回りだね」と菜摘。

「近道を知らなかっただけ」と哲平。

「そもそも同じ目的地じゃない」と篤人が言った。

会場係が、使わない卓を片付けてもよいか尋ねた。三人が頷くと、椅子が次々と運び出され、広い部屋の中央に一卓だけが残った。壁には〈第十回同窓会〉の横断幕が大きすぎる文字で揺れていた。

食後、篤人はグループチャットへ写真を投稿した。三人と四十五脚の空席が写っている。

〈次回はもっと集まろう〉と入力したが、菜摘が「嘘っぽい」と言い、哲平が笑った。篤人は文章を消し、〈参加者三名。開催しました〉だけを送った。

既読は三十七まで増えた。返信は一つもなかった。

店を出る前、菜摘がチャットを退出した。芸名を変えるからだと言った。哲平も、大学用の連絡先へ切り替えるため退出した。

篤人は一人で会場を確認し、最後の卓に三枚の名札を置いた。〈幹事〉〈欠席常習〉〈留年候補〉。高校時代の呼び名を裏返すと、白紙だった。

照明が消えたあと、チャットには篤人のアカウントだけが残った。彼は削除せず、グループ名を〈参加者三名〉へ変えた。

人数表示は一名だったが、その矛盾だけは、誰にも訂正されなかった。