取り分ゼロの記録係

コルネの分け前は、いつも残らなかった。

宿代、薬代、装備の修理、依頼人への補償。仲間が報酬を受け取ったあとに足りない分を、自分の取り分から埋めていた。誰にも恩を着せず、帳面にはただ「調整」と書く。

成果板に表示された直接貢献は0%。隊長ラモンは、その値を見つけて広間へ掲げた。

「何もしていない記録係が、報酬へ触れるのはおかしい」

コルネは帳面と分配印を取り上げられ、パーティーから追放された。

その夜、仲間は初めて報酬を好きに分けた。ラモンは最も大きな袋を取り、残りを戦闘成果に応じて配った。全員が以前より多く受け取り、コルネが隠していたのだと笑った。

翌朝、宿の扉が開かなかった。

代金が払われていない。修理工房は武器を返さず、薬屋は掛け売りを断った。依頼人からは壊した荷車の補償請求が届く。昨夜の袋を出しても足りない。ラモンは、記録係が支払いを怠ったせいだと叫んだ。

仲間のひとりが古い財布を開くと、修理代の控えが折り畳まれていた。別の者の薬箱には、コルネの署名入りの補充札がある。彼女は自分の袋を空にしただけでなく、誰が惨めな思いをしないよう支えたかさえ隠していた。昨夜の多い取り分が、急に重く感じられた。

宿を出たコルネは、別の小隊から分配相談を受けていた。旧仲間の怒声が聞こえても戻らなかった。助けるのではなく、最後に自分の名前が残る契約だけを確認するため、帳面の控えを開く。

そこには未払いがなかった。支払いが止まったのは、ラモンが分配印を奪った後からだ。

パーティー契約核が自動監査を始めた。報酬だけでなく、遠征を続けるために消えた費用、壊した物への責任、仲間が受け取れた薬や寝床まで読み込む。コルネの取り分が空になるたび、ほかの全員の冒険が次の日へ繋がっていた。

ラモンは帳面を返すから復帰しろと命じた。

コルネは新しい小隊の分配印を握る。

「私は数字を隠していません。あなたたちが、残った袋だけを見ていたんです」

契約核は古い隊長権限を閉じ、新しい代表者を表示した。

《隊内運営貢献・真正算定》

申告値:0% → 真値:100%

働き順位:首位 コルネ

役割更新:記録係 → パーティー代表

旧隊長ラモン:分配権停止