告発鏡の前で

王立学院の全校集会で、奨学生アデル・セルフィは壇上へ呼ばれた。

制服の背には墨が染み、髪は片側だけ切られている。

生徒会長ロザリン・メイは優雅に微笑み、銀の腕輪を掲げた。

「この王家献上品を、アデルの机から発見しました。私を妬み、盗んだのでしょう」

貴族生徒たちが「平民泥棒」と声を上げる。ロザリンは一年間、アデルの教科書を焼き、食堂で膝をつかせ、告発すれば家族の店を潰すと脅してきた。

学院長は壇上の真実鏡へ向かう。

「双方、鏡の前で供述を」

ロザリンは先に立った。

「私は彼女へ親切にしてきました。腕輪に触れたことさえありません。退学を求めます」

真実鏡は沈黙した。嘘を暴く鏡ではないらしいと、会場に安堵の笑いが広がる。

アデルは鏡の前へ進む。

「私は腕輪を盗んでいません。そして、ロザリンから継続的ないじめを受けました」

鏡はやはり沈黙する。

ロザリンが肩をすくめる。

「証拠のない告げ口ね」

「鏡は供述を裁く物ではありません」

学院長が答え、鏡の裏面を返す。

そこには、腕輪がたどった一日の映像が映った。ロザリンが宝物庫から持ち出し、取り巻きへ「机に入れなさい」と渡し、アデルの髪を切りながら「盗人はどんな髪でも似合わない」と笑う場面まで残っている。

王家献上品は、盗難時に周囲を記録する。ロザリンはその機能を知っていたため、「腕輪に触れていない」と言い張った。だが映像では手袋を使い、さらに宝物庫の持出簿へ自分の生徒会長印で『告発教材として借用』と署名していた。

「教育です! 平民に身分を教えるための」

壇上の小さな録音石が赤く光る。ロザリン自身が、いま目的まで認めた。

アデルは制服の墨を隠さず、客席の家族へ顔を向ける。学院長が合図すると、会場の扉から王室監察官が入った。

ロザリンは初めて声を震わせる。

「父は公爵よ。こんな集会の記録など消せる」

監察官は、彼女が署名した持出簿と鏡の原本記録を掲げた。

「王家の記録庫へ、すでに永久保存されています」

そして学院長が最後の処分書を読み上げる。

「ロザリン・メイ。窃盗、虚偽告発、脅迫および継続的ないじめにより、王立学院から永久退学とする」