扉に書いた家族の数

領都の外れには、空き部屋が四十もある通りがあった。家主たちは値上がりを待って戸を閉ざし、その軒下で孤児たちが眠っていた。

新領主アメリアは、家を没収しなかった。代わりに一つの通りだけ、空室維持負担金を導入した。

「人が住める状態の部屋を六か月以上空けた場合、一室につき月銅貨三枚。ただし修繕中、入居募集中、倉庫利用中は公開札を出せば免除。集めた金はこの通りの住居修繕だけに使う。私が相続した空き別邸十二室も対象だ」

家主ごとの部屋数、免除理由、納付額を街角の大板へ掲示した。隠し部屋が見つかれば翌月分を二倍にするが、住居として貸せばその日から負担は止まる。

翌週、家主たちは動いた。税を払う者もいれば、安い家賃で部屋を貸す者、共同住宅へ寄付する者もいた。最も古い宿屋は、積立金で屋根と水回りを直し、親のない子どもが暮らす家になった。

ただし「孤児院」とは名付けなかった。年長のロイが反対したのだ。

「十八歳になった日に、また追い出される名前に見える」

そこで入居期限を年齢で切らず、仕事や次の住居が決まるまで本人と相談することにした。家事当番は年齢でなく希望と得意で分け、管理者の判断だけで退去させない。費用、苦情、空室は食堂の板に毎月公開する。

近所の大工、洗濯屋、教師が自分から手を貸した。子どもたちも家具の配置を決め、余った一室を「次に来る人の部屋」として空けた。空室税の対象かと役人が冗談を言うと、アメリアは笑った。

「入居募集中の札がある。免除だ」

開所の日、扉へ人数を書くことになった。大人は「十二人」と記そうとしたが、ロイが白墨を取り上げる。

十二人。その後ろに、丸で囲んだ一を足した。

「これは?」

「次に来る人。最初から家族の数に入れておく」

近所の家々も同じ時刻に玄関灯をともした。誰が住み始めたかを、通り全体で覚える合図だった。

夕暮れ、扉の灯がともった。

――ただいま十二人+一人。

空いていた部屋は、もう投機ではなく、誰かを待つ余白になった。