新しいグループ名

奈紬が正月の食卓につくと、母が家族グループへ写真を送った。四人分の箸とおせち、中央に「仲良し四人家族」と書かれた紙の飾りが写っている。

グループ名も同じだった。

父はほとんど発言せず、兄は数年前から通知を切り、奈紬は帰省のたび母の質問に答える係だった。それでも母は、名前だけは変えたがらなかった。「言葉にしておけば、家族は離れない」と言う。

食事の途中、兄のスマートフォンが鳴った。母が同じ席から「もっと食べて」と送ったのだ。兄は画面を伏せる。奈紬は黒豆を一粒つまみ、言った。

「グループ名、変えない?」

母の笑顔が止まる。「どうして新年からそんな話」

「仲良しかどうかを名前で決めたくない」

「仲が悪いって言いたいの?」

「連絡する場所だって分かる名前にしたい」

父が「家族連絡網でいいんじゃないか」と言う。兄は首を振った。「連絡網だと、また全員返信しろってなりそう」

奈紬は候補を一つ打った。

四人の連絡箱

箱なら、必要なものを入れ、不要になれば出せる。誰かがいつも見張る必要もない。母は「味気ない」と言った。

「お母さんの写真を送るのはいい。返事を強制しない。予定は相談してから決める。責める話は一対一で。緊急は電話」

「ルールまで作るの?」

「仲良しって書く代わりに、続けられる形を決めたい」

兄が自分の通知をオンにし、父が「それなら使える」と言った。二人が母を説得するのではなく、自分の希望を一つずつ置いた。

母はしばらくおせちの蓋を見ていた。やがて、紙の飾りを外して裏返す。白い面にペンで「四人の連絡箱」と書いた。字は少し曲がっている。

グループ名が変更されました。

誰も拍手のスタンプを送らなかった。代わりに母が、翌月の法事について「二月三日か十日、どちらが都合いい?」と投稿した。決定ではなく、質問になっている。

奈紬は自分の予定を開き、「十日なら行ける」と返した。兄は「どちらも難しい」、父は「三日」と書いた。

四人の答えはそろわなかった。それでも食卓は壊れなかった。

奈紬は裏返された紙の飾りを、写真に撮らず目で見た。仲良しである証明より、違う返事を置ける箱の方が、今の家族には似合っていた。