明日のシフト表

放課後児童クラブのシフト表は、色の違う磁石でできている。

湊川眞昼は、急な穴を善意で埋める働き方が嫌いだった。笹森喜和は、子どもや家族に予定どおりを求めても仕方がないと言う。眞昼には子どもがいない。だから頼みやすいと思われることにも、頼まれた人だけが困ることにも腹が立つ。喜和は、自分も何度も助けられたから空いていれば替わる。

金曜の夕方、同僚から連絡が来た。保育園から呼び出され、明日の土曜勤務に出られない。責任者はシフト表を見て、眞昼の青い磁石を朝から夕方まで伸ばした。

「予定、ないよね」

眞昼は返事をしなかった。喜和が「私も午後なら」と言うと、責任者は二人で適当に分けて、と事務室を出た。

「替わりたくないなら断っていい」

「あなたが全部やるのも違う」

「子どもは来る」

「だから無料で埋めるの?」

二人は同じ場所を見ながら、別のことに怒っていた。

シフト表の下には、責任者自身の白い磁石がある。土曜は管理業務で不在と書かれているが、行先は研修でも会議でもない。

眞昼は自分の青い磁石を外した。喜和も緑の磁石を外した。二人は同時に表をいったん空にした。

午前は喜和、午後は眞昼。開所と閉所は責任者。延長分には時間外勤務の赤枠を付ける。二人は三つの磁石を並べ直し、変更届を作った。どちらか一人の都合や親切に見えないよう、必要人数と勤務時間だけを書いた。

責任者は「そこまでしなくても」と言った。眞昼は変更届を机に置き、喜和は勤怠端末を開いた。二人とも、無償の延長を入力しなかった。

変更届が承認されるまで、喜和は予定表の写真を保存し、眞昼は勤怠システムの申請番号を控えた。口約束で消える交代にしないためだった。

土曜、眞昼は午後から来た。喜和は午前の子どもの様子を短く引き継ぎ、鞄を持って帰った。感謝で居残らない。

眞昼は柔軟さを美徳とは思わない。喜和も、決めた時間だけで暮らしが回るとは思わない。

閉所後、二人は翌週のシフト表を見た。赤い時間外枠と、責任者の白い磁石が、同じ一列にきちんと残っていた。