星が消えた十二時

十二時、星が消えた瞬間に首飾りも消えた。

市立プラネタリウムでは、満天の星を映す特別上映が行われていた。投影が終わり、ドームが暗闇から薄明るさへ戻ると、中央席の老婦人の首から宝石がなくなっていた。隣席には切れた留め金だけが落ちている。座席の下には柔らかなパン袋があり、通路には黄色い小さな帽子が落ちていた。

館内時計は十二時七分。係員は、深夜の貸切上映だったと警察に説明した。観客は寄付者だけで、入口も上映中は施錠されていた。老婦人と遺産を争う親族は、午後十一時から午前一時まで自宅でオンライン会議に参加していた。

上映中、老婦人の後ろには背の低い人影が座っていたという。係員は子どもではなく、小柄な寄付者だと説明した。防犯映像には、同じ色の帽子が一列になって入館する場面があったが、暗視映像のため年齢までは判別できない。

切れた留め金には、引率者用の青い名札ひもが挟まっていた。親族はそのような物を見たこともないと言った。老婦人は上映前、暗闇が苦手だから子どもたちの近くに座りたいと受付へ頼んでいた。その記録だけ、係員の説明と食い違っていた。

二つの奇妙なものが残っていた。座席下の小さなパン袋と、通路に落ちた黄色い帽子だ。係員は前の回の子どもの忘れ物だろうと言った。だがパンはまだ柔らかく、帽子の内側には当日の入館印がある。

投影機の運転記録を調べると、「12:00 学校団体」と表示された。係員は、日付設定の誤りだと言い張った。しかし予約台帳にも、近隣校の天文学習会が同じ時刻に記されていた。

星空が出ていたから夜だと思っただけだった。ドームの闇も星も人工のもの。上映は午前零時ではなく、昼の十二時に始まった学校向け回だった。

親族の夜のオンライン会議はアリバイにならない。正午、彼は引率補助の名札を借り、黄色い帽子の列に紛れて入館していた。

刑事は投影機をもう一度止めた。非常灯がつき、ドームの出口から昼休みの校庭が見えた。

星が消えた十二時は夜の終わりではない。真昼を暗くできる部屋で、犯人だけが本物の夜をアリバイにしていた。