春を待つ百皿
辺境の開拓地アステラには、五つの故郷から人が集まっていた。
冬備えの会議になると、麦を主食にする者は麦を、芋を食べる者は芋を優先しろと争う。領主補佐メイヴは、全員に同じ食べ物を押しつけなかった。
「百皿棚を作りましょう」
各家は、家族が冬に食べる保存食をまず確保する。その残りから、十皿につき一皿を共同棚へ。麦なら一皿分の粉、芋なら一皿分の乾燥芋、燻製肉も豆も同じ「一食分」で数える。税率は一割で揃えるが、品目は選べる。
共同棚から受け取るときは、一人一日一枚の食札。自分の文化に合う品を選んでよい。ただし棚の残数は絵札で公開し、少ない品には黄色札を付ける。監査役は五つの故郷から一人ずつ。領主館の料理人にも特別枠はない。
「うちの香辛料煮を、誰が食べる」
南方出身の女性が不安そうに言った。
「食べたい人が選びます。残れば、あなたへ返します」
最初に棚へ置かれたのは黒麦パンだった。次に干し芋、酸っぱい豆漬け、山羊肉の燻製、香辛料煮の瓶。珍しい匂いに子どもたちが集まり、互いの保存法を教え始めた。
北方の男は南方の瓶棚を補強し、南方の女性は彼の魚を乾かす縄を編んだ。誰も同じ味にならなかった。それでも一割という同じ重さが、違う皿を同じ棚へ並べた。
最初の吹雪の日、配給所で北方の老人が食札を差し出した。歯が弱く、故郷の干し魚は噛めない。係は余りの多い品を押しつけず、柔らかな南方の豆煮を勧めた。
隣では香辛料の苦手な子に、薄味の芋が渡された。公平とは全員が同じ皿を食べることではなく、同じ一枚で自分に必要な皿を選べることだと、誰の目にも分かった。
百品目には届かなかった。だが冬至前夜、棚札は百枚を超えた。
メイヴが入口に最後の看板を掛ける。
――春を待つ百皿。選ぶのは、食べる人。
その晩、最初の食札を持った子どもは、故郷では見たことのない香辛料煮を選んだ。隣で南方の女性が笑い、百皿棚に新しい食べ方が一つ加わった。外では雪が、五つの故郷から来た屋根へ同じ厚さで積もっていた。