最後の一人がいない

喜多見朔は三枚のカードを円形の回転台へ置き、室生薫と根来大河の手を台の縁へ重ねた。

「合図で一緒に回す。速さも、止める瞬間も同じにする」

三人の前には、剣、鎖、鍵のカード。壁の規則は一つだった。

〈全員が一度カードを交換し、最も遅く交換を完了した一名を処刑する〉

主催者が望んだのは、誰が最後になるかを巡る押しつけ合いだった。早く交換すれば安全だが、相手がカードを離さなければ完了しない。三人は互いの手を疑い、開始から七分、一度も動けずにいた。

朔は卓中央の回転台に気づいた。配膳用に見えるが、三方向にカード固定溝がある。

「一、二、三」

三人が同時に台を百二十度回す。剣は薫へ、鎖は大河へ、鍵は朔へ移る。固定溝が同時に三つの交換完了センサーを踏んだ。

〈交換完了時刻――三者同一〉

天井の赤灯が迷うように点滅する。

『最も遅い者を一名選びます』

「同じ時刻なら、最も遅い者は三人いる」と朔。

『その中から一名を抽選します』

「規則は、同率時に抽選するとは書いていない。処刑対象は『最も遅く完了した一名』。三名なら条件に合う一名が存在しない」

残り一分。主催者は誰か一人にカードを動かさせ、完了時刻を更新しようとする。

『追加交換を行えば、全員を解放する』

大河の手が揺れた。薫がその手首を押さえる。

「もう一度動かした人が、単独で最後になる」

三人はカードから手を離した。

終了ベル。判定装置が交換時刻を比較する。秒だけでなく、千分の一秒まで同じ。回転台の一つの軸が、三枚を同時に動かしたからだ。

〈単独の最遅完了者、該当なし〉

〈処刑対象、該当なし〉

三つの首輪が落ちる。

『これは交換の駆け引きではありません』

朔は鍵のカードを回転台へ戻した。

「違う。最後の一人を作るか、作らないかの駆け引きだった」

扉が三枚同時に開く。薫と大河も立ち上がった。

朔は二人へ手を差し出す。

「主催者は、交換すれば必ず順番ができると思った。でも一つの台で回せば、誰も最後にならない」

三人は同時に白線を越えた。背後で止まった回転台には、誰の遅れも記録されていなかった。