来週は何曜日が消えますか
消える曜日は毎週変わり、日曜の夜に駅の案内板で発表される。月曜が消える週もあれば、二度目の土曜が消える週もある。各家庭はカレンダーの該当欄へ、失いたくない物を一つだけ画鋲で留める。その物だけが消えた日を覚えている。
霞沢彗は、恋人の未紗と暮らしていた。
最初の週は火曜日が消えた。二人は映画の半券を留めた。水曜の朝、半券の裏に「喧嘩した」と書かれていたが、何についてかは分からない。
次は金曜日。合鍵を留めると、土曜には鍵に新しい傷が増えていた。誰かが部屋を出て、戻った跡だ。
消える日が発表されるたび、二人は何を残すかで揉めた。写真、指輪、旅行の予約票。物は一つしか選べない。選ばれなかった約束は、消えた曜日と一緒に二人の記憶から抜けた。
「私たち、毎週少しずつ別れてるんじゃない?」
未紗が言った。
彗は否定できなかった。クローゼットには知らない服が減り、銀行口座には敷金の返金があり、洗面台の歯ブラシは一本になったり二本になったりした。消えた日に未紗が出ていき、別の消えた日に戻っているらしい。
ある日曜、案内板は「来週は全曜日のうち一日」とだけ表示した。どの日が消えるか分からない。留める場所も選べないため、記憶物はカレンダーの中央へ置く決まりだった。
未紗は指輪を外した。
「これを留めよう」
彗は首を振った。指輪が覚えても、二人が覚えなければ意味がない。
代わりに、白い紙へ「一緒にいるか、別れるか、消えない日に決める」と書いた。二人で署名し、中央へ画鋲を刺した。
夜、彗は未紗の手を握った。視界が白くなった。
目を開けると日曜だった。同じ日曜なのか次の日曜なのか、時計では分からない。未紗はいなかった。部屋には彼女の荷物もない。紙だけがカレンダーに残り、署名の片方が消えていた。
駅へ行くと、案内板は「今週、消えた曜日はありません」と表示していた。誰も驚かず通り過ぎる。
彗は部屋へ戻り、カレンダーを外した。月曜から日曜までの七枚の欄が、画鋲の穴を中心に円形へ裂けて床へ落ちた。
壁には、印刷されていない八日目の白い四角だけが残った。その中央で、未紗の指輪が画鋲に通され、小さな振り子のように揺れていた。