犯人は主催者
九十九折真白は、正面モニターの仮面を指した。
「私たちをこの部屋へ閉じ込めた犯人は、主催者です」
鐙谷壮一、雨ケ谷雫、与那城慧莉も、次々に同じ方向を指す。
「主催者だ」
「主催者です」
「この男」
四つの緑灯が同時に点いた。
壁の規則は一つだった。
〈この部屋へ四人を閉じ込めた犯人を、全員が嘘なく同一人物として指名できれば、全員を解放する〉
四人には、十五年前の銀行強盗に関する資料が配られていた。壮一は元警備員、雫は逃走車の所有者、慧莉は犯人の娘、真白は事件を追った記者。主催者は、四人のうち誰かが強盗の共犯だと信じ込ませている。
互いを指せば、誰かが嘘になる。沈黙すれば全員死亡。過去の事件を暴く一ラウンドに見えた。
真白は資料の表紙だけを読んだ。
規則は「銀行強盗の犯人」とは書いていない。「この部屋へ四人を閉じ込めた犯人」とある。
実行した黒服も複数いるが、命令し、場所を用意し、施錠を宣言した人物はモニターの仮面だ。開始前、本人が誇らしげに言っている。
『私が君たちを集めた。私のゲームからは逃げられない』
その録音が、指名の真実性を保証する。
『私は犯人ではない。主催者だ』
仮面の声が震えた。
真白は答える。
「肩書きは免罪符にならない。人を意思に反して閉じ込めた者を、犯人と呼ぶ」
『同一人物の本名を言え』
「規則に本名はない。四人が同じ人物を指せばいい」
カメラ映像は、四本の指が同じモニター中央を示していることを認識した。
〈指名一致〉
〈発言内容、真実〉
四つの首輪が外れ、出口だけでなくモニター横の隠し扉も開く。そこには仮面の主催者が座っていた。自分の逃走経路を、勝者用の解放装置と同じ回路にしていたのだ。
壮一が彼を見ても殴らない。雫は資料を床へ置き、慧莉は真白の肩へ手を添えた。
主催者が呟く。
「誰が銀行強盗の共犯か、知りたくないのか」
真白は開いた外扉を見た。
「それは、このラウンドの質問じゃない」
四人は誰も裏切らず、同じ犯人を残して外へ出た。嘘をつけない部屋で最後に暴かれたのは、参加者の過去ではなく、ゲームを作った者の現在だった。