百万人を三人目にする

《王者ライカが同接十二人の配信者と組む理由ある?》

《喝采喰らいは注目されるほど強くなる》

《人気者を連れてきた時点で最悪の相性》

登録者一千万の鳴神ライカが拳を振るうたび、喝采喰らいは巨大になった。配信の視聴者数は九十万、百二十万、百五十万と増え、その熱量が怪物の金色の筋肉へ流れ込む。

隣にいる灰谷宵のチャンネルは、配信開始時まで同接十二人だった。

「宵、俺だけ切って逃げろ。視聴者が俺を見ている限り、勝てない」

「あなたを見ないよう頼む必要はありません」

宵は攻撃せず、画面の共同配信設定を開いた。喝采喰らいが百万の目を宿した拳を振り下ろす。

《視聴一人につき攻撃力一加算、現在百八十万》

《配信終了しても蓄積値は一時間残る》

《宵の固有能力不明、ここまで一度も使ってない》

ライカが拳を受け止め、床へ両膝をつく。宵は彼の肩に手を置き、設定欄の《参加》を一度だけ押した。

配信を見ていた全員の画面に、同じ選択肢が現れる。

――共同攻略へ参加しますか。

最初に押した十二人の名前を、宵は見逃さなかった。無人同然の配信で彼の検証を支え続けた視聴者たちだ。その十二の光を追うように、百万を超える指が、ほぼ同時に「はい」を選んだ。

喝采喰らいの身体から金色が抜ける。視聴者は観客ではなく、宵とライカのパーティーメンバーへ変わった。注目はもう怪物の餌ではない。百万人分の支援値が、ライカの拳へ集まる。

「これなら、俺が殴っていいんだな?」

「いいえ。みんなで、です」

ライカの一撃が落ちる。画面の向こうから重なった百万の小さな衝撃が、喝采喰らいを光の粉へ変えた。

《参加ログ百八十七万四千六百二十一名、全員の支援値を確認》

《宵の《観客席解放》、視聴者を戦力化する唯一能力》

《人気を奪ったんじゃない。ライカが集めた人気を、全員の勝利にした》

ライカは立ち上がり、十二人しかいなかった頃から残る宵の古参コメントを読み上げた。

「“いつか隣で戦え”。約束、今日で達成だ」

宵は初めてカメラへ笑う。

その瞬間、配信タイトルが自動更新された。

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