百人目の寝床

国境砦の前には、毎日新しい避難民が到着した。

小領主エーヴァンの町が用意できる寝床は百。昨日の時点で九十八が埋まり、門外には二十人が並んでいる。

家臣は門を閉じるよう進言した。

「全員を救えないなら、最初から入れぬ方が公平です」

エーヴァンは、閉門ではなく空き数を大板に書いた。

優先は今夜を越せない病人、乳幼児、妊婦。判定は門医と宿舎番が別々に行い、理由を本人へ説明する。役人の紹介状や寄付額では順番を変えない。その後は到着順。家族は分けないため、空きが足りなければ次の家族へ回し、待機順位は消さない。入居は三日ごとに更新し、自力で宿を得た者の枠を次へ。食料は全員三日分を先に確保する。宿舎の名簿は人数だけ公開し、病名や身分は晒さない。

費用は、町を通過する大型商隊の荷車一台につき銅貨三枚。百床を超える増設にのみ使い、徴収額、材木代、完成予定床数を板の裏へ記す。

「避難民にも働かせるべきだ」

家臣が言う。

「働ける者は賃金を払って雇う。寝床を人質にはしない」

その日、空き二床には一人の病人と付き添いが入った。銀貨を差し出した商人も九十九番から動かなかった。

四人家族は百一番目として待機する。父親は不満を飲み込み、順位札を受け取った。

夜、町の大工が増設板を見て役場へ来た。

「材木代はもう集まっている。なら今夜、納屋へ床を張れる」

避難民の家具職人も「雇ってほしい」と続いた。宿屋は古い敷布を出し、農家は納屋の半分を三日だけ空けた。誰も強制されず、誰の善意も永住の条件にはならない。

夜明けまでに十二床が増えた。

待機していた四人家族が呼ばれると、父親は自分の順位札を大切に板へ戻した。

「次の人が、自分は飛ばされていないと分かるように」

昼、門外へまた六人が到着した。

門番はためらわず、大板の数字を裏返す。

『定員百十二。使用中百。空き十二』

その下に、昨日まではなかった一行が加わっていた。

『増設を手伝う人募集――賃金あり。寝床の有無は問いません』

百人目の寝床で終わるはずだった町は、その日から、空き数を増やせる町になった。