空白期間の採用票
転職支援会社での最終面談日、土岐明日葉は一人の応募者が自動で不合格になっていることに気づいた。
理由は〈二年三か月の就業空白〉。企業へ推薦する候補者一覧から、名前ごと灰色になっている。
後輩は履歴書を見て、「介護離職なので、長く働けるか心配されたのかもしれません」と言った。明日葉は職歴欄だけでなく、添付された制作実績を開いた。空白期間中も、月に数件ずつウェブサイトを更新し、オンライン講座を修了している。制作実績には、介護者向けの予定共有ページや、文字を大きくした予約画面が並んでいた。離職中に必要になったものを、自分で作り続けていたのだ。応募先が求める新しい制作ソフトも、その期間に習得していた。応募システムが、個人受託を職歴として読み取らず、講座名を前の会社の部署名へ誤分類していた。
「空白じゃない。欄の方が、この人の働き方を読めていない」
推薦締切まで二十分。営業責任者は、機械が落とした候補を戻すと選考通過率が下がると言った。介護が再開する可能性もある、と。
明日葉は不合格を解除し、本人へ連絡した。介護の詳細を聞くのではなく、働ける時間と、必要な調整だけを確認する。応募先には、空白の説明ではなく、期間中に続けた案件と習得した技術を推薦文へ書いた。
後輩には、離職理由を先に尋ねず、継続していた活動を三つ探すよう伝えた。システムにも、個人受託と学習履歴を職務経験として確認する欄を追加する。
「でも、企業が気にするのは空白ですよね」
「だから私たちまで、最初に空白を見る必要はないよ」
候補者は締切の三分前に推薦一覧へ戻った。推薦文の冒頭には、空白期間ではなく、継続案件の更新日が並んだ。
明日葉は来週から、再就職を支援する公共施設で働く。年収は下がり、成果報酬もなくなる。それでも、早く決まる人だけを追うのではなく、働き直すまでの時間に付き合いたかった。
責任者は、最後まで惜しいと言った。明日葉は営業成績の画面を閉じ、転職先の初週予定を開く。相談一件あたりの時間を短縮目標にしない方針の下に、最初の相談枠が一つ空いていた。
明日葉はその枠を引き受け、入職確認を送信した。
灰色だった名前が、推薦一覧の一番下で白く戻っていた。