竜かぼちゃと昼寝番
ルカンの畑では、竜かぼちゃが自分で倉庫へ歩く。
熟すと蔓が四本の短い脚に変わり、丸い実を持ち上げて、よちよちと坂を下る。倉庫の秤に乗り、重さごとに棚へ並び、翌朝には契約先の食料商へ転送される。見張り役の小竜は、たいてい藁の上で寝ている。
「お前、俺より働いてないな」
ルカンが言うと、小竜は片目だけ開け、また眠った。
彼は以前、辺境砦の炊事長だった。兵士二百人分を三人で作り、夜襲があれば夜食を追加し、食材が足りなければ自分の給金で埋めた。厚い前掛けは焦げ穴だらけで、肩紐は何度も結び直して短くなっている。休暇願いにはいつも《戦時につき却下》と赤い印が押された。
竜かぼちゃが一玉、倉庫へ入る。続いて二玉、三玉。小竜は寝たまま尻尾で扉を押さえていた。
会計石が光る。
《竜かぼちゃ二十玉、食料商との定期取引完了。代金入金済み》
砦でひと月働くより多い。けれどルカンは喜んで包丁を握ったりしない。今日は自分の昼食すら、昨日焼いたパンで済ませるつもりだった。
竜かぼちゃは倉庫が満ちれば、入口で行儀よく座って待つ。怒鳴らなくても、鞭を振らなくても、次の棚が空くまで休めるのだ。ルカンはその丸い背中を見るたび、砦の炊事場にも椅子を置けばよかったと思う。
旧軍章が赤く燃えた。
『砦の炊事場が混乱している。今すぐ戻れ』
元司令官の声だった。
「断る」
『兵が腹を空かせている』
「炊事兵を増やせ」
『戦えない者に人員は割けん』
ルカンの目が細くなる。
「食わせない軍が戦えるのか」
『理屈はいい。お前は命令に慣れているだろう』
「断るのには、もっと慣れた」
『給金を上げる』
「昼寝の方が高い」
司令官が怒鳴り始める前に軍章を土へ置く。小竜が起き上がり、ぱくりと咥えた。炎を一息吐くと、軍章は黒い灰になった。
「それは食べ物じゃないぞ」
小竜は満足そうに欠伸をした。
収穫を終えた竜かぼちゃたちは棚で静かに眠っている。ルカンも藁の山へ上がり、小竜の温かな腹を枕にした。
砦から二度目の連絡は来なかった。来ても、小竜が先に燃やすだろう。