藁一束ぶん暖かい家

北辺の学校では、暖炉を一日中焚いても教室が凍えた。石壁が冷気をそのまま伝え、子どもたちは手袋をしたまま文字を書いた。薪は一日十二束。村の森は冬を越す前に裸になる。

転生建築士ユーニャは、壁を厚い石に替える案を退けた。

「石を増やすより、熱を通しにくいものを挟みます」

彼女は教室の内側に薄い板壁を作り、石壁との隙間へ乾いた藁を詰めた。空気を多く抱える藁の断熱層。それ以外は変えなかった。

村長は「藁小屋にする気か」と怒ったので、ユーニャは同じ大きさの木箱を二つ用意した。片方は板一枚、もう片方は二重板の間に藁。中へ同じ熱さの焼き石を入れる。

一時間後、板一枚の箱は手を入れると冷え、焼き石も素手で持てた。

藁入りの箱は蓋を開けた瞬間に温気が頬へ当たり、石には布が必要だった。

実際の教室も一日で改修した。朝に薪四束を焚き、昼に暖炉を消す。外では窓に氷花が咲いたが、室内の水差しは凍らない。子どもたちは上着を脱ぎ、かじかんでいた指で一時間に書ける文字が二十三字から六十一字へ増えた。

夕方まで追加した薪はゼロ。十二束が四束になり、煙突の煙も三分の一になった。壁際に置いた温度札は、昨冬より九度高い。

村長は石壁増築の借金証書を破った。

「北辺の学校が十八、診療所が六ある。森が尽きる前に全部頼む」

藁は壁の中へ隙間なく詰め、子どもが触れないよう板で閉じた。村人が心配したのは見栄えだったが、完成後に見えるのは滑らかな内壁だけだ。机の位置も窓の大きさも変わらない。

改修前、暖炉から最も遠い席は五度しかなく、インクが朝ごと凍った。改修後は同じ席で十四度。教師が黒板へ書く間も白い息が出ない。薪を運んでいた上級生四人は、その時間を授業へ戻せた。村の木こりが四束だけの薪山を見て計算すると、学校一棟で冬に千束以上残る。二十四棟なら、伐らずに済む森は谷一つ分だった。村長は「藁の家」と笑った言葉を撤回し、自宅の改修代まで先に机へ置いた。

領主は二十四棟分の注文書をユーニャへ差し出した。

「北方断熱工事の主任として、今ここで正式に採用する」