装備スコアゼロ
原初兵ゼロの一撃で山が割れ、天城ユズルの攻略隊は全滅寸前だった。
《適応レイド》
原初兵のレベルは、参加者全員の装備スコア合計と同じ。
《初訪者の名札》
装備スコア:0
効果:装備者をレイド参加者として登録。
二百人が神話装備を持ち込み、原初兵はレベル二百万を超えていた。強くなるほど敵も強くなる。それでも皆、さらに上位装備を探し続けた。
「全部外せ!」
ユズルの声に、誰も従わない。武器を外した瞬間に攻撃されれば死ぬ。彼は自分から剣、鎧、指輪を捨て、初訪者の名札だけを胸につけた。
装備スコアが一万下がり、原初兵の腕が少し細くなる。
一人の治癒師が杖を外す。次に盾役。数字が減るたび、原初兵の鎧は剥がれ、攻撃範囲も狭くなる。
最後まで神剣を握っていた隊長が叫ぶ。
「ここまで集めた力を捨てろというのか!」
「捨てるんじゃない。戦場の外へ置くだけだ」
隊長が神剣を床へ置く。
合計スコア、ゼロ。
巨大な原初兵は光へ縮み、初期村の案内役と同じ背丈の少年になった。HPバーも敵性表示もない。胸にはユズルたちと同じ名札がある。
「ようこそ」と少年は言った。「装備の使い方を説明しますか?」
全員が言葉を失う。原初兵は世界を滅ぼすラスボスではなかった。参加者の強さに合わせて危険度を調整する、最初の訓練相手だった。二百人分の最強装備が、彼を怪物へ育てていた。
ユズルは少年へ手を差し出す。名札同士が光り、レイド画面がチュートリアル表示へ戻った。
《原初兵ゼロ討伐失敗》
《参加者装備スコア合計:0》
少年は床に置かれた神剣を拾おうとせず、一つずつ持ち主へ返した。
「装備は悪くありません。相手を見る前に、数値だけを持ち込んだことが問題です」
隊長は神剣を受け取ったが、鞘へ収めたまま少年へ名前を尋ねる。彼には《原初兵ゼロ》以外の名がなかった。
二百人で候補を出し、最後は少年自身が選ぶことになった。レイド終了後、皆は力を取り戻した。それでも、名札だけは外さなかった。
《最終試験を終了――最弱装備で登録された者だけが、力を持たない相手を敵と呼ばずに済みました》