誰でもある聖女

列聖の円には、百人の信徒が跪いていた。

中央の椅子には、少年ジュリクが座らされている。彼は笑わず、泣かず、自分の名を呼ばれても瞬きをしなかった。

《生きた聖者》を作る儀式では、信徒が一つずつ徳や性質を捧げる。捧げたものは本人から消え、聖者候補へ移る。そのたび候補の中にあった別の性質が押し出される。

教会は貧民から勇気、母親から慈愛、職人から忍耐、反逆者から怒りを奪い、従順な奇跡人形を作ってきた。

侍祭マネアは、儀式台の下に捨てられたジュリクの記憶札を見つけた。彼にもかつて好きな歌や、嫌いな食べ物や、妹を守ろうとした怒りがあった。すべて他人の徳で押し流されている。

教皇ディゼンが最後の祈りを始めた。

「この者に、民の信仰を」

百人から信じる力まで奪えば、誰も教会を疑えなくなる。

マネアは円へ飛び込み、ジュリクを椅子から突き落とした。

光が彼女へ集中する。

最前列の老人から勇気が移り、マネアの恐怖を押し出した。次に女の慈愛が入り、彼女自身の冷静さが消える。忍耐、怒り、喜び、疑い、記憶、声。百人分の性質が流れ込み、もともとのマネアが一つずつ内側から追い出されていく。

「止めろ!」とディゼンが叫ぶ。

だが儀式は受け手を選び直した。跪く人々は、何を失ったか分からない空虚な顔で彼女を見ている。

マネアは立ち上がった。

声が百人分に重なった。

「地下に、過去の聖者がいる」

誰かの記憶で、隠し扉の場所を知っている。誰かの勇気で、衛兵の槍へ進める。誰かの怒りで、祭壇を倒す。誰かの腕力で石蓋を開けた。

地下から、性質を奪われて抜け殻になった歴代の候補者たちが見つかる。献金台帳、奪った徳の名簿、失敗作の骨。

群衆の中に残っていたわずかな疑いが燃え上がった。衛兵は槍を下ろし、ディゼンを取り囲む。

「私は教皇だ。神の名で命じる!」

マネアは笑った。その笑いは、円の三十七番にいた少女のものだった。

「あなたの神は、何番の人から奪ったのですか」

ディゼンが拘束され、列聖式は崩れた。

ジュリクが床から彼女を見上げる。

「マネア?」

その音を聞くと、身体の奥で何か小さなものが振り向いた。しかし百人分の記憶と声と癖が押し寄せ、すぐ見えなくなった。

銀鏡へ映る顔も一定しない。見る者によって、母に、友に、失った子に見えた。彼女自身が選んだ表情は一つも残っていない。

「あなたは誰?」とジュリクが尋ねた。

女は百通りの答えを知っていた。

その中に、マネアだけがなかった。

腐った教会から聖者を奪い返したのは、誰でもある女だった。

だから勝利の記録には、最後まで一人の名を書けなかった。