追放者の空いた場所
罠外しのミデラが追放された理由は、討伐寄与率1%だった。
「鍵を開け、床を棒で叩くだけ。そんな者に報酬は払えない」
勇者ハルゼンは彼女の席を酒樽置き場に変えた。次の標的は王墓の甲冑王。以前も同じ墓へ入り、勇者の聖剣で退けている。罠外しなど不要だと誰も反対しなかった。
ところが王墓の広間へ着く前に、隊列は崩れた。
扉を開けるたび背後の壁から槍が出る。踏んでいない床が沈み、消したはずの炎が別の通路で燃え上がる。以前は何も起きなかった場所ばかりだった。
ようやく甲冑王を倒しても、空の鎧がまた立ち上がる。
ハルゼンは聖剣で何度も砕いた。鎧はそのたび墓の奥から新しい兜を呼び、元へ戻った。
入口まで退いた隊の前に、ミデラがいた。返却する鍵束を持って、ギルドへ向かう途中だった。
「助けろ。報酬は考える」
「考えなくて結構です」
彼女は墓の壁に並ぶ勝利旗を見た。以前の遠征で、勇者たちが討伐の証として立てたものだ。
ミデラは旗をすべて抜いた。
すると墓の罠が止まり、甲冑王の鎧が崩れた。
王墓では、侵入者が残した印を次の罠の起点にする。ミデラは過去の遠征で、隊が進むたび足跡や傷、松明の煤まで消していた。だから罠は眠ったままだった。彼女がいなくなった今回、勇者の勝利旗が墓全体へ「ここから襲え」と命じ続けていた。
帰還後、ハルゼンは旗を抜く行為を「撤退支援」として処理しようとした。
戦果盤は過去の王墓記録まで再検証した。罠が作動しなかった地点には、必ずミデラの鍵、布、探り棒の痕跡がある。今回の討伐も、旗が抜かれた瞬間に甲冑王への再生供給が途絶えていた。
酒樽の横に立たされていたミデラへ、受付官が隊長席を引き戻す。
彼女は座らず、鍵束を戦果盤の前へ置いた。
表示が反転し、今度はハルゼンの席が空いた。
かつて彼女を追い出した隊員たちは酒樽をどけ、空いていた席を布で拭いた。ミデラはそこへ座る代わりに、次の依頼書を広げる。ハルゼンが口を開く前に全員が探り棒の先を見つめ、進むべき場所の指示を待った。
【再算定完了】
【ミデラ・討伐寄与率:1% → 98%】
【隊内順位:追放者 → 首位】
【役職更新:罠外し → 討伐隊長】