第215話 第十章「扉を外す」前編
三月一日 午前五時四十分
正面扉を壊す道具は、用意しなかった。
代わりに轟は、戻すための道具を並べた。
低床油圧ジャッキ、二台。
木製の荷重分散板、四枚。
蝶番軸を押し上げる細径ポンチ、三本。
錆を落とす刷毛。
仮受け車輪。
扉の角を守る厚布。
交換用の座金。
同じ規格のねじ。
番号札。
最後に、鉛筆。
「鉛筆?」
タマキが聞いた。
「外した位置を書く」
「覚えれば」
「建物は、人間の記憶を保証にしない」
「人間も、建物の音を保証にしない」
「だから両方、残す」
轟は正面扉の蝶番を、一番上から《A》《B》《C》とした。
扉は高さ二・四メートル。
幅一・八メートル。
鋼板と防火材を合わせて二百六十キロ。
重い。
だが轟一人なら、瞬間的に受けられる。
受けられることと、受けてよいことは違う。
左肩は、頭より上へ長く上げられない。
右肩には足場崩落と手押しポンプで増えた打撲がある。
扉を自分の体で支えれば、外せる。
その後、戻せなくなる。
「四人で持つ」
轟は言った。
「俺、凱、水務隊から二人。迅は持つな」
「なぜ」
迅。
「別の場所へ行く」
「どこ」
「水槽上部」
「まだ決まってない」
「決めた」
「誰が」
「俺」
「権限」
「構造危険指示」
迅が黙る。
「反論は」
「ある」
「言え」
「扉の方が殴られる」
「殴らせない」
「久我、強い」
「知ってる」
「俺なら」
「壁を殴る」
迅は右手を見た。
否定できない。
「水槽上部の補助梁、昨日から〇・八ミリ下がった」
轟は塔の断面図を示す。
「圧力低下の時に、北側の受け座がずれた。退去で荷重が動くと、落ちるかもしれない」
「直す?」
「今は戻せない。落ちた時だけ、元位置へ押し返せ」
「落ちる前は」
「触るな。余計にずれる」
「落ちてから」
「七歩、取れる」
断面図の水槽上部には、弧を描く点検路がある。
梁の先端が振れれば、七つの支持金具へ順に当たる。
「梁を相手にする?」
タマキ。
「相手じゃない」
迅。
「じゃあ能力、使える?」
「落ちてくるなら、攻撃と同じ」
「建物が迅を殴る?」
「建物へ聞け」
轟が言った。
「俺は、殴ると言ってる」
午前六時。
久我へ最終手順を送った。
正面扉は外から蝶番を外す。
扉そのものは破壊しない。
開口後、外側の武装者は入れない。
第一波の退去者だけを出す。
残留者の住戸へは入らない。
水槽とポンプの担当者は残る。
久我の返答は短かった。
『拒否する』
「理由」
真琴。
『外側の武装者を止める保証がない』
「空白の旗にも命令権はない」
『だから信用しない』
「住民が開ける場合は」
『住民を盾にするな』
「住民自身の計画です」
『計画を作ったのは外だ』
由良が包囲線の外から送話器へ近づく。
「違う。構造条件は外が出した。残るか出るかは中が決めた」
『鷹取。おまえは通行停止中だ』
「口も止められた?」
『外は、止めた札を便利に無視する』
「剛嶺もやる。だから両方へ同じ記録を送る」
『記録が扉を守るか』
「守らない。人が守る」
『その人間を、私は信用しない』
凱が送話器を取った。
「私も、自分を信用していない」
『何の冗談だ』
「信用できないから、役割を狭くする。私は退去列の時刻だけを読む。進路を決めない。警備隊へ突入命令を出さない。住民を保護名簿へ一括登録しない」
『王だった者が、随分と小さくなった』
「人が通る門は、小さい方が数えやすい」
『伏見の言葉か』
「借りた」
『借りた権限は返せ』
「そのつもりだ」
久我は応じなかった。
午前六時二十二分。
天環側の監督官が、別の書面を持ってきた。
「正午までに自主開門がなければ、法定の緊急収用を実施する」
「何を収用する」
真琴。
「塔と給水設備の管理権」
「住居を含む?」
「給水維持に必要な範囲」
「範囲を」
「現場で判断する」
「誰が」
「突入指揮官」
「住民の異議申立ては」
「安全確保後」
真琴は書面を受け取らなかった。
「これも破る?」
タマキ。
「他人の原本は破れない」
「昨日は」
「作成側の控えだった」
「法律って細かい」
「細かくない法は、大きい人間だけが通れる」
轟が監督官へ向く。
「正午までに扉を外す」
「開けるのではないのか」
「開けるのは中だ」
「言葉遊びをしている時間はない」
「蝶番を外すのに、言葉は使わない」
作業開始までの五十一分は、扉を外す時間より長く使った。
まず、武器を置く場所を決める。
塔から二十メートル離れた除雪済みの区画。
天環側の銃、警棒、破城具。
空白の旗が持ち込んだ工具のうち、切断に使える物。
剛嶺側から貸与された登攀具。
全部を同じ山へ積む案を、由良が止めた。
「混ぜると、返す時に揉める」
「今は突入を防ぐ方が先だ」
監督官。
「返す時に揉める物を預けさせたら、誰も次に置かない」
真琴が三つの区画を引いた。
《天環》
《剛嶺》
《作業用》
所有者名を公開したくない物は、番号だけ。
預けた時刻。
受取人。
返却条件。
迅は拳を置けないため、両手首へ白い布を巻いた。
「何の意味がある」
監督官。
「武器を使わないと、見えるようにする」
七瀬。
「拳は布を巻いても拳だ」
「公務証を下げても、命令は命令です」
「同列にするな」
「同じだとは言っていません。見える印だけでは行為を止められない点が似ていると言っています」
迅は布を見た。
「これ、外す?」
「水槽へ行く時は外して。機械へ巻き込む」
轟。
「象徴、短い」
「安全なので」
次に、入る可能性がある人間を数えた。
第一波の受取医療者、四人。
椅子と担架の担当、七人。
水圧確認、二人。
記録者、七瀬一人。
構造担当、轟と補助四人。
警備隊は含めない。
「緊急時は」
武装班長が聞いた。
「呼ばれた一人だけ、白線まで」
轟。
「一人では対処できない事態がある」
「二人目を呼ぶのは、中から」
「判断できない住民だったら」
「外の誰かが勝手に判断できる証明にはならない」
真琴が、扉の横へ大きな表を貼った。
《入る人》
《呼んだ人》
《目的》
《出る予定》
タマキが空欄を見上げる。
「出る予定、決められない時は」
「未定と書く」
「未定の人を入れる?」
「入る理由が急迫なら」
「未定って、無限と違う?」
「違う。確認時刻を決める」
表の横へ、小さな欄が増えた。
《次の確認》
轟はその紙を見て、工具表にも同じ欄を足した。
人間の出入口と、道具の出入口は、似ている。
入れた物が戻るとは限らない。
だから、戻す責任を先に書く。
午前六時五十一分。
蝶番の試験をした。
本物の扉へ触れる前に、廃材で同じ厚みの蝶番を組み、昨夜回収した錆粉と水を塗ってある。
「わざと錆びさせた?」
タマキ。
「一晩で本物と同じにはならない。固着方向を見るだけ」
轟はポンチを軸へ当てた。
小槌、一打。
軸は上へ出ず、横へ噛んだ。
「失敗」
迅が言う。
「試験」
「動かなかった」
「動かなかったことが分かった」
若い水務隊員が、強く打とうとする。
「待て」
轟が止めた。
「本番なら、強打は扉枠へ振動を送る。格子の落とし金が締まるかもしれない」
「では、どうする」
「軸の上へ荷重が残ってる」
仮扉を〇・七ミリ持ち上げる。
再び一打。
軸が三ミリ上がった。
「少し浮かせるだけで」
「扉は重い。重い物は、力より順番で動く」
凱が試験扉の右下へ入る。
「私はどこを持つ」
「右下。左膝を深く曲げるな。扉が傾いたら、下へ受けず右へ逃がす」
「逃がす方向に人がいたら」
「いないように線を引く」
「線を越えたら」
「作業中止」
「久我が越えたら」
「俺が受ける」
「外の兵が越えたら」
「それも俺が受ける」
「二人同時なら」
「同時にしないための線だ」
轟は白墨で、一メートル間隔の二本線を引いた。
雪の上ではなく、除雪した石床へ。
一本目は外側の人間が止まる線。
二本目は内側から出る人間が止まる線。
間に立つ者は、どちらへも背を向けられない。
「伏見が倒れた場合」
真琴が聞いた。
「作業中止。扉を仮受けへ戻す」
「能力が切れた場合」
「同じ」
「久我が負傷した場合」
「サナを呼ぶ。外の医療者は、本人かサナの要請があれば一人」
「天環側が強制収用を開始した場合」
「凱が時刻を読む。七瀬が線を撮る。俺は扉を戻す」
「争わない?」
迅。
「扉を半分外したまま争うな」
「誰と」
「全員」
轟は試験扉を元へ戻した。
軸の上下を間違えないよう、Aと書く。
番号は、勝った側の印ではない。
壊す前と同じ場所へ返すための記憶だった。
午前七時十三分。
作業開始。
正面扉の前へ、白い線を二本引いた。
一メートル間隔。
轟がチョークを持つ。
「この間へ入るのは、一人ずつ」
水務隊副官が言った。
「作業員の動線が足りない」
「扉の左右に分かれる。線の間は、交渉と格闘だけ」
「格闘を前提にするのか」
「久我がいる」
扉の向こうで、鍵が鳴る。
『聞こえている』
「好都合」
『その線は何だ』
「一人門〈ワン・ゲート〉」
轟は二本の線の間へ立った。
誓痕が、足元から薄い橙色で立ち上がる。
壁ではない。
境界である。
この一メートルの間で、轟が一度に敵として受けるのは一人だけ。
外から押し寄せる者も。
内から出る者も。
数で押す意思が、線の手前でわずかに鈍る。
「久我」
「何だ」
「今、俺の敵はおまえだ」
『光栄だ』
「他は入れない」
『外の兵もか』
「入れない」
監督官が眉をひそめた。
「我々を敵扱いするのか」
「線を越えて住民の意思より先に入るなら」
「公務だ」
「重さは肩書きを見ない」
轟は右足を、柱間隔に合わせて開いた。
作業員が扉下へ荷重板を差す。
ジャッキ一号。
二号。
扉を持ち上げる前に、現在位置を鉛筆で縁へ写す。
上端、三点。
左右、四点。
床との隙間、六ミリ。
「一号、二ミリ」
ジャッキが上がる。
「二号、一ミリ」
鋼製扉の重さが、蝶番からわずかに抜ける。
A蝶番の軸へポンチを当てる。
轟は右手で小槌を持った。
左肩を上げない。
軽く一打。
音を聞く。
「錆、内側まで」
『昨日、水が回った』
久我。
「知ってる」
『なら諦めろ』
「諦めるほど錆びてない」
二打。
軸が一ミリ上がる。
扉の小窓が開いた。
四角い金属枠が飛び出す。
轟の右手首を狙う。
小槌を離さない。
手首を引けば、ポンチが落ちて扉下へ入る。
轟は前腕で枠を受け、左へ捻った。
枠の角が皮膚を擦る。
久我が内側から引く。
二人の力が、小窓の厚さ七センチでぶつかる。
「手を離せ」
『おまえが』
「作業中」
『占拠中だ』
「知ってる」
『会話が短すぎる』
「迅に言え」
『似てきた』
「不名誉」
轟は枠を上へ押し、窓枠の角へ噛ませた。
久我の腕を傷つけない。
枠だけを動かなくする。
空いた右手で、小槌をもう一度振る。
三打。
A軸が二センチ出る。
久我は枠を放した。
代わりに、細い索が小窓から走る。
轟の右肘へ巻く。
引かれる。
轟は後ろへ一歩退く場所を見た。
西側の作業空間。
荷重板の外。
「出口、見たな」
久我の声。
轟が確認した西側の退路へ、四角い光が落ちる。
《退路狩り》。
仮受け車輪の枠が、突然床へ固着した。
西への一歩を塞ぐ。
轟は退けない。
索が肘を引く。
右肩の打撲が燃える。
「伏見!」
凱が叫ぶ。
「線へ入るな!」
轟は答えた。
敵は一人。
久我だけ。
他の者が助けに入れば、《一人門》の条件が崩れる。
轟は引かれる力へ逆らわない。
一歩、前へ出る。
小窓へ近づく。
久我が予想したより速い。
轟の左手が、小窓の縁を掴む。
肩を上げず、肘を下げたまま。
「そっちが退路を閉じるなら」
『何だ』
「前へ行く」
轟は額を扉へつけた。
殴るためではない。
扉の震えを聞くため。
久我が内側で右足へ重心を移す。
索をさらに引く。
その振動が鋼板を伝う。
轟は引かれる瞬間に、右肘を外へ回した。
索が枠の角へ擦れる。
切らない。
緩める。
輪が一つ外れた。
轟は右手を自由にする。
小槌を拾わない。
ポンチを掌で押す。
A軸が、完全に抜けた。
「上、外れた!」
作業員。
「扉の角度を変えるな! 一号ジャッキ、〇・五上げろ!」
久我が内側から扉を押す。
上の蝶番を失った扉が、外へ傾く。
ジャッキの板が鳴る。
轟は右肩を入れなかった。
腰と胸で、扉の面を受ける。
「押すな、久我!」
『外しているのはおまえだ』
「今押したら、枠が曲がる!」
『入れなくなる』
「住民も出られない!」
扉の向こうで、別の声が上がった。
「久我、押すな!」
水巻ハツ。
「蝶番ごと持っていかれる!」
「外が入る!」
久我。
「扉を壊したら、もっと入る!」
久我の力が止まった。
轟は息を吐く。
「Bへ移る」
作業員がポンチを替える。
午前七時二十八分。
塔上部。
迅は、水槽外周の点検路を走っていた。
中央水槽は、巨大な金属の夜のように立っている。
内側には千トン近い水。
外側へ霜。
北側の補助梁が、低く軋む。
長さ六メートル。
梁端の受け座が、八ミリずれている。
轟は〇・八ミリと言った。
夜の間に、十倍になった。
「轟」
迅は携帯送話器へ言う。
『作業中』
「梁、八ミリ」
扉越しの衝撃音。
『聞き間違いか』
「見てる」
『退避しろ』
「落ちる」
『だから退避』
「下に人」
梁の真下は、七階から九階の中央廊下。
退去準備の住民がいる。
『階を空ける』
「間に合わない」
梁端が、一センチ動いた。
支持金具へ当たる。
ガン。
最初の衝撃。
迅は一歩退く。
梁が自分へ攻撃を始めた。
人間ではない。
怒りも、意志もない。
それでも、落ちる力は選ばない。
二つ目の金具へ。
ガン。
二歩。
迅の靴底が、霜を削る。
右手の小指と薬指が痺れる。
三つ目。
ガン。
三歩。
点検路の幅は六十センチ。
左側は水槽壁。
右側は吹き抜け。
四つ目。
梁のボルトが飛ぶ。
迅は顔を横へ向けた。
ボルトが頬を掠める。
四歩。
体の内側へ、衝撃が溜まる。
五つ目。
ガン。
五歩。
梁は斜めに落ち始めた。
下の廊下から、悲鳴。
「走るな!」
迅が叫ぶ。
「壁側へ! 頭を下げろ!」
自分でも珍しい長さだった。
六つ目。
金具が歪む。
ガン。
六歩。
迅の背中が、水槽の点検梯子へ当たる。
七つ目の支持金具は、すでに半分割れている。
ここで梁が当たれば、完全に落ちる。
迅は右手を握った。
古傷が痛む。
拳で受ければ、骨が持たない。
轟の声が送話器から飛ぶ。
『迅! 拳で梁を殴るな!』
「聞こえてる」
『手の平! 受け座の下! 押す方向は上じゃない、北東へ十三度!』
「細かい」
『建物なので!』
梁が七つ目へ当たる。
ガァン。
七歩目。
迅は後ろへ退く。
点検路の端。
踵の半分が空へ出る。
七つの衝撃が、体の中で一本になる。
返す相手は、久我ではない。
梁でもない。
落ちようとする方向そのものだった。
迅は右拳を開いた。
掌底を、梁端の下へ当てる。
「戻れ」
七つの衝撃を返す。
梁が浮いた。
爆発ではない。
六メートルの鋼材が、落下の軌道を一瞬だけ逆にたどる。
北東へ十三度。
轟の指示通り、ずれた受け座へ梁端が滑る。
元の溝へ戻る。
だが止まらない。
反動で跳ねる。
迅の右手首が折れそうに反る。
左手も添える。
押し続ける。
「固定!」
下から、住民技師が仮止め索を引く。
一本。
二本。
三本。
梁が受け座へ沈む。
迅の力は、そこで切れた。
膝が落ちる。
掌の皮が裂けている。
骨は、たぶん無事。
梁は元位置へ戻った。
固定したのは、住民の索だった。
午前七時三十五分。
正面扉。
B蝶番が外れた。
残るのは下のCだけ。
扉の重さが、下へ集中する。
「ジャッキ二号、一ミリ下げろ」
轟。
「下げる?」
「C軸の噛み込みを抜く」
扉の小窓から、久我の手が出た。
今度は捕縛枠ではない。
短い棒。
轟の顎を狙う。
轟は頭を振らない。
避ければ、背後の作業員へ当たる。
左掌で棒を受ける。
手術した肩へ衝撃を上げないよう、肘を体へつけたまま下へ流す。
棒が扉の外面へ沿う。
轟は右手で久我の手首を取る。
「放せ」
『そっちが』
「この会話、二回目」
『同じ扉だからな』
「同じ結果にはしない」
久我が棒を引く。
轟は手首を離す。
棒が小窓へ戻る瞬間、厚布を差し込む。
小窓が閉まらない。
「卑怯」
『道具だ』
「褒めてない」
『確認が必要』
久我の声が、少しだけ速い。
狭い扉の内側では、普段よりよく喋る。
轟はC軸へポンチを当てる。
久我が扉の裏から、蹴りを入れる。
鋼板が震える。
小槌の狙いがずれる。
轟は打たない。
振動が収まるまで待つ。
久我がもう一度蹴る。
待つ。
三度目。
待つ。
「いつまで続ける」
『おまえが諦めるまで』
「足が先に痛む」
『私の心配か』
「扉の裏へ蹴ると、左足首へ返る」
久我の左足首には古い靱帯損傷がある。
轟はそれを攻略情報にしない。
蹴りが止まる理由として、事実を言っただけだった。
「壊れた体で守るなとは言わない」
『何だ』
「壊れた体しか守れない形にするな」
『説教か』
「俺への禁止事項」
久我は答えない。
轟が小槌を振る。
一打。
C軸が上がる。
二打。
外側で、天環の武装班が動いた。
監督官が時計を見る。
「梁の異常が確認された。緊急性が上がった。開口と同時に入る」
「入れない」
凱。
「退け」
「私は線の外にいる」
「なら妨害するな」
「入る順番は決まっている」
「公務を住民会議へ従属させる気か」
「住民の家だ」