第291話 第十二章「捨てた土地、残った人」前編
五月三十一日 午前六時十八分
撤退が終わると、医療の仕事が始まる。
時雨ミソラは、その言い方が嫌いだった。
終わる前から始まっていた仕事を、勝手に後ろへ並べたように聞こえる。
西採石所南詰めの仮診療区には、三列の寝台があった。
北医療路から来た者。
西採石路で傷ついた者。
南稜線路から歩いてきた者。
しかし、寝台は経路順には並べない。
呼吸。
出血。
意識。
痛み。
自力移動。
本人の希望。
所属は問わない。
本人確認はする。
外環共同病院で作った白衣路〈ホワイト・パス〉は、白衣を着た者の所有する道ではなかった。
患者ごとに開く。
患者ごとに閉じる。
医療と経路と受入先と本人の同意が揃った範囲だけ、道になる。
今朝も同じだった。
「重傷三」
ミソラは一覧を読んだ。
一人目。
物資倉庫で棚の下敷きになった荷役担当。左大腿骨骨幹部骨折。血流は保たれ、固定後に北医療路で搬送。意識清明。
二人目。
石樋橋で偵察車の操舵輪へ胸を打ちつけた運転手。肋骨骨折と肺挫傷疑い。追撃側の人間だが、治療受領と本人確認は済んでいる。
三人目。
最後の門で交換木栓の受け板に右下腿を挟まれた門守。右下腿開放骨折。洗浄と固定を済ませ、手術評価のできる受入先へ搬送済み。
「三人とも生存」
阿久津サナが確認した。
「三人とも受領済み」
「呼称の公開範囲」
「一人目は職名だけ。二人目は本人が所属も氏名も非公開。三人目も職名だけ」
「受けた」
軽中等傷、二十。
倉庫戦で五。
橋で六。
捜索と追加救助で四。
最後の門で五。
打撲。
捻挫。
浅い裂創。
軽い熱傷。
額の傷。
透子の左手首。
瀬尾の右前腕。
四角札の伝令の右膝。
追加救助された老女の左足首。
凱の左膝は新規負傷へ足さない。
既存の滑膜炎が一時増悪。構造的な再損傷なし。六月上旬まで冷却と荷重制限。
迅の右掌は閉じている。
旧骨折由来の環指と小指の痺れ、左右の握力差は継続。
轟の左肩は再損傷なし。
術後の頭上保持制限は変えない。
澪の右耳は、三声を使った後の圧迫感が翌朝まで残った。現在は本人の基準へ戻っている。
ミソラ自身の慢性痛は五。
「四じゃない?」
サナ。
「五」
「六?」
「交渉しない」
「十一分」
「八時に」
「今」
「一覧が」
「一覧は逃げない」
「痛みも」
「逃げてほしいね」
「希望と予定を混ぜない」
ミソラは椅子へ座った。
責任者が休むと、不安が出る。
休まない責任者は、もっと大きな不安を作る。
サナが時計を伏せた。
「見ないの」
「私が見る」
「十一分を越えたら」
「起こす」
「十秒前」
「十秒も休息」
「厳しい」
「あなたが決めた」
ミソラは壁へ背を預けた。
眠らない。
目を閉じる。
外から、冷たい食事を配る音がした。
紙包み。
木椀。
水瓶の栓。
敵前で火を消した乾燥食の残りを、今も温めていない。
温められないのではない。
負傷者の再診と、薬の時刻と、到着受領を先にした。
冷たいものを食べる理由が変わった。
失った暖かさは、同じだった。
午前七時二分。
生存者の帰還名簿は、旧計量所の机に広げられた。
北、六十四。
患者三十八。
介助者等二十六。
西、百七十三。
南、七十五。
合計、三百十二。
空欄、零。
真琴は、数字の下へ《新規死亡零》と書いた。
「書かなくても、三百十二全員生存で分かる」
七瀬が言う。
「分かる人は」
真琴。
「書くと何が違う」
「負傷者の中に、後で死亡確認へ変わった人がいないことを、この時点で確定する」
「未来まで保証する?」
「しません。《五月三十一日午前七時二分現在》を付けます」
「長い」
「短くすると、永遠に生きている記録になります」
七瀬は撮影機を低い固定台へ置いた。
名簿全体を一枚で撮らない。
人数。
確認時刻。
空欄零。
公開を拒否した人の欄は覆い布のまま。
「顔がない」
タマキ。
「名簿の映像だから」
「人がいる証拠は」
「受入側の復唱。封緘名簿。本人確認記録。全部を一つの映像へ押し込まない」
「三つのうち一つがなくなったら」
「残り二つから、なくなったことを確認する」
「全部なくなったら」
「生きている人へ聞く」
「人が先」
「そう」
「でも、紙を先に戻した」
「人が着いたことを、紙で奪われないため」
タマキは、最後の欠け四角札を箱へ収めた。
「箱の受取人」
「西採石所記録庫」
「目的」
「六月七日まで保管。その後、本人情報を分離して各受入点へ返す」
「箱ごと置く?」
「置かない」
「なぜ」
「記録庫は一か所。人は三か所。必要な紙だけ、必要な所へ戻す」
「配達が増える」
「仕事が残る」
南野は椅子に座ったまま、受領台の閉鎖時刻を書いた。
頭部外傷後のため運転はしない。
車両の音がすると、視線だけがそちらへ向く。
「運転したい?」
迅が訊いた。
「したい」
「怖い?」
「怖い」
「乗る?」
「診察と再訓練が許したら」
「正しい」
「最近、正しいことが人気ですね」
「嫌い?」
「停車中は」
南野は閉鎖札を裏返した。
《受領中》から、《閉鎖》へ。
受領台が閉じても、受領された人が消えるわけではない。
けれど、机はまだ閉じなかった。
真琴が、帰還名簿とは別の黒い紙ばさみを出した。
表紙には《撤退対象外》と書かれていた。彼女はそれを二本線で消し、《作戦開始前死亡確認・五名》へ直す。
「対象外では、いなかったことになる」
七瀬が言った。
「生存者数の対象外です。記録の対象外ではありません」
真琴は五つの名を読んだ。
北見トモ。
松里幹。
浜部千鶴。
相羽清。
冬木レン。
迅は黙って聞いた。
生存者総数を口にした時、五人の名は、その外側へ押し出されていた。
押し出したのは数え方であって、死者ではない。
「三人は」
ミソラが続けた。
「北見トモ、松里幹、浜部千鶴。死亡確認後、夜間に遺体を北医療受入点へ搬送。本人確認は、携行札だけではなく、既往記録、身体特徴、別々の二名による確認を重ねた」
「家族への連絡」
七瀬。
「指定連絡先へ完了。北見さんの工具袋、松里さんの眼鏡箱、浜部さんの鍵束は封緘済み。受取人が決められている物だけ返す。決まっていない物は、善意で分けない」
「三人を運んだことは、撤退人数へ入れない?」
タマキ。
「入れない」
真琴。
「人を運んだのに」
「生存確認と遺体搬送は、どちらも必要です。ただし、同じ成功数へ足すと、何ができて何が間に合わなかったかが見えなくなります」
残る二名の欄には、受領時刻がなかった。
代わりに、場所が書かれている。
相羽清。
北観測棚の崩落板下。座標は北時計盤から東へ二十七歩、下段梯子から六歩。上部の石板が再崩落する危険があり、遺体を動かせなかった。
冬木レン。
西斜面の焼損車両、二列目左席。車体番号、座席、歯科記録、残存した靴の補修跡を照合。燃料槽と路肩の亀裂が安定せず、回収を中止した。
「映像は」
七瀬が訊いた。
「本人確認用だけ。公開しない」
ミソラ。
「位置は公開する?」
「回収へ必要な範囲だけ。敵へ墓標を渡すための座標にはしない」
「遺族は」
「二人とも連絡済み。遺体を持ち帰れていないことも、持ち帰ったようには言っていない」
真琴が二枚の責任札を机へ置いた。
相羽清の札には、北観測棚の安全再確認、遺体状態の再評価、進入不能時の理由返却。
冬木レンの札には、焼損車両の冷却確認、路肩支持、本人確認資料と遺品の分離。
最初の再確認日は六月七日。
回収できなければ、期限を消して終わりにはしない。入れなかった理由と、次に確認する日を家族へ返す。
北側の現場責任欄へ真壁梓が署名した。医療確認欄へミソラ。
西側の経路確認欄へ守屋峻。剛嶺側の立会範囲へ鷹取由良。
由良は、相羽の札には触れなかった。自分が確認していない区間へ、親切で名を足さない。
「撤退命令が二日早ければ、五人は生きていたと思う?」
七瀬が訊いた。
誰へ向けた質問か、決めない声だった。
真壁は時計を見なかった。
「分かりません」
「遅れと無関係?」
「それも、まだ分かりません」
「じゃあ、何を書く」
「因果関係未確定。検証を放棄しない」
短い言葉ではなかった。
短くすれば、誰かを早く赦せる。あるいは早く罰せる。
どちらも、五人の代わりにはならない。
七瀬は黒い紙ばさみを撮った。
遺体の映像ではない。
五つの名。
三つの搬送受領。
二つの未返還。
家族への連絡時刻。
封緘された遺品。
四人の責任者名。
「見出しは、《三百十二人、全員無事》にしない」
「作戦中は死者零です」
真琴。
「後ろを削れば、五人が消える」
「削りません」
「三百十二人生存。作戦前死亡確認五。遺体搬送三、返還未了二」
「長いですね」
「人が多いから」
タマキが言った。
誰も笑わなかった。
笑わないことが、正しい態度だとも決めなかった。
ミソラは五人の欄を閉じ、生存者の名簿と同じ箱へ入れなかった。
同じ棚には置く。
同じ数にはしない。
午前八時十七分。
石樋橋の標板は、雨に濡れたまま残っていた。
守屋峻は西受領点の遠隔確認盤で、回転台の開閉記録を読んでいる。
《閉鎖 二十時十二分》
《医療車通過のため半開》
《再閉鎖 二十時四十六分》
《歩行者通行 十四件》
《担架通行 二件》
《管理不能 なし》
「追撃側の車両は」
轟。
「昨夜二十三時十一分、木栓を破壊して一台通過。門柱、回転軸、歩行者幅に重大損傷なし」
「交換木栓」
「朝に一本交換」
「誰が」
「橋守二名。井戸番立会」
「俺の名は」
「設計者欄。今朝の交換にはない」
「それでいい」
「寂しい?」
七瀬。
「何が」
「自分がいなくても直った」
「それが仕事だ」
「本当に?」
「少しは」
「何が少し」
「寂しい」
轟は右手で、左肩の装具位置を確かめた。
隠さずに言っても、肩の制限は消えない。
寂しさを認めても、橋を自分の物へ戻さなくていい。
「障害の撤去期限」
真琴。
「六月七日正午」
「延長する場合」
「橋守、井戸番、残置診療点の三者確認。敵がいるから、だけでは延長しない」
「理由」
「敵は、いつまでもいる理由にできる」
「撤去できない場合」
「管理不能として開放。閉じた罠にしない」
守屋は右脚の装具を締め直した。
「俺の父の時は、落とす命令だけが届いた。解除命令は帰ってこなかった」
「橋は」
「落ちた。村は二年、迂回した」
「今回は壊していない」
「だから安心、とは書かない」
「何を書く」
「六月七日に、橋が何として残っているかを見る」
守るという言葉へ期限を付ける。
期限は、愛情が短い証拠ではない。
次の人へ、同じ決定を押しつけないための余白だ。
午前九時四十分。
青石台の九床診療点へ、最初の交代要員が戻った。
戻った、と記録する。
残った、とだけ書けば、置き去りに見える。
戻った、とだけ書けば、危険を選んだ理由が消える。
だから、往路と復路を別にする。
阿久津サナ。
佐渡。
橋守一名。
井戸番一名。
日中交代、四名。
九床のうち、現在使っているのは四床。
咳の強い老人。
移動で呼吸状態が悪化する女性。
夜間せん妄があり、場所を変えると自傷の危険が高い男性。
家族の到着確認を待つ子ども。
四人は生存者へ含めない。
青石台周辺の地元患者であり、本人・生活を知る者・医療の三者で、今は移さないと確認した。
残り五床は空床。
空いているから、誰でも収容できるわけではない。
救急受入、休息、隔離、処置のための余白だ。
「病院と呼ばない」
ミソラが確認した。
「九床診療点」
サナ。
「なぜ」
「病院って言うと、手術も輸血もできると思われる」
「できないこと」
「手術、持続人工呼吸、血液製剤の長期保管。夜間の人員は二名。重傷者は白衣路で外へつなぐ」
「白衣路は常設?」
「患者ごと」
「誰が開く」
「患者、診療点、搬送側、受入側」
「軍の命令で」
「開かない」
「空白の旗が」
「所有しない」
サナは、診療点の入口へ白い布を掛けなかった。
白い布は、誰でも入れる安全地帯に見える。
実際には、武器確認も、本人確認も、受入可否も要る。
入口に置いたのは、普通の木札だった。
《九床診療点》
《日中交代 五月三十一日~六月七日》
《夜間二名》
《重傷対応不可》
《六月七日に、患者・職員・受入側が継続または終了を再確認》
「七日で治らなかったら」
子どもが訊いた。
「治る期限じゃない」
サナ。
「追い出される?」
「決め直す日」
「同じこと」
「同じになる可能性もある。違う場所を選ぶ可能性もある。今、七日以後を勝手に決めない日」
「面倒」
「身体は説明書を短くしても短くならないよ」
「ミソラの言い方」
「借りた」
「返す?」
「使ったって言う」
子どもは木札の《重傷対応不可》を指でなぞった。
「できないことを書くの、弱そう」
「弱い場所を、強いふりさせない」
「敵が来たら」
「武器は橋の手前。患者なら診る。武装したまま入ろうとしたら、入れない」
「強い」
「どっち」
「分からない」
「それでいい」
診療点へ向かう往復札が、朝の箱へ収まった。
道は残っている。
拠点は、もう残っていない。
午前十時二十八分。
三経路台帳の表紙へ、失効日が書かれた。
《六月七日 二十四時》
タマキが眉を寄せる。
「道が消える?」
「この台帳の手順が失効する」
真琴。
「人が同じ道を通ったら」
「新しい目的と受取人を確認する」
「昨日の札は使えない?」
「使わない」
「形は便利」
「便利なものは、前の命令まで運ぶ」
タマキは北の丸札を一枚、指で回した。
「保存する?」
「見本一組。個人情報のないものだけ」
「残りは」
「受入記録と照合後、本人へ返すか、本人の選択で廃棄」
「捨てたら、いた証拠が」
「共通名簿には番号と受領時刻が残る。本人の手元へ全部を置く必要はない」
「持っていたい人もいる」
「返す」
「見たくない人」
「廃棄を選べる」
「七瀬は欲しい?」
「記録としては」
七瀬が答える。
「でも、欲しいと持っていいは違う」
「撮った映像も」
「公開範囲を再確認する。撤退中に非公開を選んだ人を、無事だったから公開へ変えない」
「英雄みたいな場面は」
「英雄へしたくない場面が多い」
「迅が六歩でやめたところ」
「撮っていない」
「見たかった」
迅が言う。
「自分で?」
「ちゃんと止まれてたか」
「止まったから、札がある」
「映像より札」
「今回は」
七瀬は、固定台から撮影機を外した。
左肩へ担がない。
タマキへ渡す。
「誰から」
タマキが訊く。
「火群七瀬」
「誰へ」
「環玉樹」
「何のため」
「記録庫まで運ぶ。中身は見ない。落としたら拾う。肩で持たない」
「私の肩は平気」
「だから使っていい、ではない」
「受けた」
記録する人も、運ぶ人も、一人へ固定しない。
午前十一時六分。
空欄が零になった名簿へ、最初の異議が出た。
「私は二人いる」
声を上げたのは、右頬に火傷痕のある女だった。
北医療路の六十四番目。
同時に、西採石路の百四十一番目にも照合番号がある。
合計生存者総数は変わっていない。
別の誰かが一人、名簿から消えている可能性がある。
旧計量所の空気が止まった。
「名前」
南野が訊く。
「公開しない」
「照合番号」
女は札を出した。
二つ。
北は丸に一本線。
西は欠け四角。
「経路変更しました」
「いつ」
「門の前。息が苦しくなって、北へ」
「西の取消札」
「もらってない」
真琴が西名簿を開く。
百四十一番目には、変更先受領済みと書いてある。
取消ではなく、到着確認を二重に残した形だ。
「西の百七十三は、あなたを含む?」
「知らない」
「北路の人数は」
「診療所で数えられた」
ミソラが医療受領札を見る。
「北路の人数は、経路変更者一名を含む。その代わり、北予定の一名が西へ変わっている」
「誰」
「本人が公開を拒否」
「照合番号」
「封緘」
「開ける条件」
「二重計上の確認。該当する」
七瀬が撮影機を止めた。
「今から封緘番号を読む間、公開撮影停止」
「なぜ」
女。
「あなたと相手の行先を結びつけるから」
「私は出していい」
「相手が出していない」
「じゃあ、私が二人のまま?」
「公開名簿では、変更線だけを出す。照合は非公開で一人ずつへ戻す」
女は腕を組んだ。
「数字を守るために隠す?」
「人を守るために、数字の作り方を分ける」
「信じろって」
「信じなくていい」
七瀬。
「封緘開封に、あなたが立ち会える。相手の番号全体は見せない。二つの末尾と変更時刻だけを照合する」
「そんな半端で」
「全部見れば、相手の生活まで見える」
「私が間違っていたら」
「異議を出したことは残る」
「恥?」
「確認」
女は椅子へ座った。
「立ち会う」
封緘箱を開ける。
立会人は女、真琴、南野、ミソラ、受入側二人。
七瀬は撮らない。
北へ移った女の照合末尾は《四七》。
北から西へ変わった人物の末尾は《二一》。
西名簿の百四十一番は、女の旧予定欄。
実到着欄には《二一》が入っている。
人数は二重ではなかった。
ただ、旧予定欄と実到着欄の罫線が近く、同じ一行へ見えた。
「私が読み間違えた?」
女。
「読み間違える書式です」
真琴。
「誰が作った」
「私」
「じゃあ、私の異議は」
「書式修正の根拠になります」
「謝る?」
「謝ります。予定と実到着を色で分けず、線の位置だけで分けました。暗所用の形札を名簿へ移す時、視認性を落としました」
「色にすれば」
透子が右手で紙を触った。
「私には分かりにくい」
女が透子を見る。
「じゃあ、どうする」
「欄を離す。予定は左頁。到着は右頁。変更は間に糸」
「紙が倍」
タマキ。
「六月七日まで使うなら、今直す」
真琴は新しい紙を出した。
女が止める。
「全部書き直すと、今の間違いが消える」
「旧版を綴じる」
「異議も」
「一緒に」
「私の名前は」
「公開範囲を選べます」
「異議を言った人、で」
「受けた」
空欄は零のままだった。
零だから、正しかったのではない。
異議を入れても零であることを、一人ずつ確かめ直した。