第343話 第二章「記憶の値札」前編
八月九日 午後一時十四分
水科イオは、止まった時計を三つ持って蔵座へ入った。
一つは午前零時。
一つは午後六時四十分。
一つは針がなく、時刻そのものを失っている。
「持込品は査定しますか」
入口の係員が訊いた。
「しない」
「手荷物検査のため、用途を」
「左は指を休ませる時刻。右は薬を飲む時刻。針なしは、まだ決めない時刻」
「時計は一つで足りるのでは」
「腕も一つで足りると思う?」
係員はイオの右腕を見た。
見る前に、見ない努力をした顔だった。
その努力は、見たことより分かりやすい。
右腕は動く。
物も持てる。
ただ、七月より前のように、誓痕の強化は返ってこない。左右の筋量差は作業着の上からでも分かる。左前腕の真鍮装具には、過ぎた終了時刻が細かく刻まれている。
「検査だけ」
イオは時計三つを台へ置いた。
「売らない。預けない。値段を言わない」
「規則上、危険物でなければ――」
「値段を言わない、も記録して」
係員は一瞬迷い、手荷物票の余白へ書いた。
《価格回答を拒否》
「そういう欄はありません」
「今、できた」
イオは時計を受け取った。
蔵座記憶競売場は、旧金融区の中央銀行だった。
円形の建物。
十二本の石柱。
天井から下がる、十二の環状レール。
かつて金庫箱を吊り上げた鎖へ、今は記憶容器が一つずつ載っている。
観客席は、貸金庫の扉を背もたれにした半円席。
入札卓には、金額板と脈拍計。
払う意思が口先だけでないか、手の震えと資金証明を同時に見るらしい。
旧銀行らしい。
信用を測るために、身体まで担保にする。
展示会は競売前の五日間、毎日二時間だけ開かれる。
内容は題名、由来、抽出方式、欠損率、所有権主張者の数、出品者が許可した三十秒以下の見本。
全内容は見せない。
見せないから欲しくなる。
「ようこそ、記憶の床へ」
壇上の少女が言った。
深緑の競売外套。
顎で切った青黒い髪。
左目は黒、右目は濃い青。
耳には、小さな秤皿。
小柄だった。
その分、靴底が不自然に高い。
台ではない。靴そのものへ重りを入れている。
「蔵座主宰、蔵前価。値段が嫌いな人も、値段が好きな人も、入場料は同じ二百環。無料にすると、無料で人を見に来るから」
乾いた高い声。
数字の語尾だけが上がる。
観客は七十三人。
白衣の研究員。
薬局組合。
劇場の演出家。
戦災史の記録官。
誓痕保険を扱う会計士。
亡くなった家族の記憶を探す老夫婦。
買う理由は、同じではない。
悪趣味な金持ちだけなら、壊すのは簡単だ。
治療へ使いたい者がいる。
事故の原因を知りたい者がいる。
自分の過去に似た物へ金を払う者もいる。
善意は、値段を付けない理由にならない。
悪意だけが、値段を付ける理由でもない。
入札者は、金額板の前で理由を一行にする。
《研究》
《治療》
《家族》
《教育》
《収集》
《補償》
一行にすると、どれも立派か、どれも怪しい。
白衣の医師は《治療》へ丸を付けた。
「患者の同意は」
イオが聞く。
「記憶の所有者とは別です」
「症例へ使う人の」
「匿名化します」
「右腕を失った人は、匿名になれば傷つかない?」
「傷つけないとは言っていません。次の患者を救う可能性がある」
「可能性へ、いくら払う」
「二十五万」
「本人へは」
「落札額から」
「競売所へ二十二%」
「必要経費です」
価が壇上から口を挟む。
「手数料へ文句があるなら、床を借りずに売ること」
「床がない人は」
イオ。
「ここを使う」
「高い」
「高い場所へ来た」
「高くない人も、ここへ連れてこられた」
価の右目が、ほんの少し細くなった。
劇場の演出家は《教育》を選んだ。
「若い役者へ、能力を失った瞬間の身体を見せたい」
「なぜ」
「演技で、失う前と後を同じにしてしまうから」
「本人の記憶を、役作りに?」
「敬意を払う」
「敬意は、閲覧権になる?」
「ならない。だから買う」
その答えは、医師より正直だった。
正直だから正しいとは限らない。
老夫婦は《家族》へ丸を付けた。
「三番に、娘がいるかもしれない」
「題名だけで?」
「朝四時に別れた」
「何年前」
「十七年」
「別れた場所は」
「言わない」
「買ったら、娘でなくても見る?」
夫婦は互いを見た。
妻が先に言う。
「見てしまうと思う」
「他人の別れでも」
「娘でないと確かめたいから」
「娘でない人の記憶を使って」
「はい」
イオは責めなかった。
探している人は、似ている物を傷つけることがある。
傷つけたくてではない。
見つけたい方が大きいからだ。
会計士は《補償》を選んだ。
「四番の炉事故記録があれば、未払い労災を再計算できる」
「落札後、本人へ返す?」
「証拠価値が落ちます」
「返さない?」
「保管します」
「誰が見る」
「審査機関」
「本人は」
「必要なら」
「本人の記憶なのに、必要なら?」
会計士は眼鏡を直した。
「証拠は、本人だけの物ではありません」
「記憶は?」
「だから難しい」
難しいと言える人も、入札板へ金額を書く。
難しさは、手を止める理由にも、進める言い訳にもなった。
最後に、《収集》へ丸を付けた男がいた。
「美しい記憶を保存したい」
「どれが美しい」
「五番。借りた名字で食卓を囲む」
「本人は、保存してほしいと言った?」
「美しい物は、本人だけの所有ではない」
イオは男の金額板を見た。
五十二万。
「その考えも、あなた一人の所有じゃない。昔から何人も言って、人の物を持っていった」
男は笑った。
「元能力者は、所有に敏感だ」
「失ったから」
「返してほしい?」
「同じ腕を返せない人に、返すと言われるのが嫌い」
イオは右腕を隠さなかった。
入札者たちも、見ないふりをやめた。
理由札は一行のままだった。
その後ろにいる人間だけが、一行では終わらなかった。
「本日の見本、一番から十二番。触れない。呼びかけない。自分の記憶と混同したら係員へ。泣いた場合、退出料は取りません。戻る場合は再入場料を取ります」
「泣く値段は」
誰かが訊いた。
「まだ市場がない」
価は即答した。
「作るなよ」
イオが言う。
壇上の価が、こちらを見た。
「水科イオ。七月八日の公開判定、関連映像の閲覧数二十七万四千」
「数えるな」
「売れば高い」
「売らない」
「査定は無料」
「無料を信用しないんじゃないの」
「査定後に手数料を取る」
「正直」
「安い美徳」
価は値札銃を指先で回した。
「今日は客?」
「調べる人」
「依頼主」
「まだ言わない」
「依頼料」
「時間で請求する」
「いいね」
価は笑わなかった。
値段の話をした時だけ、少し安心した顔になる。
天井のレールが動いた。
一番の容器が下がる。
《母の椅子》
椅子の軋む音。
子どもの笑い声。
画面はない。音と匂いと、左手の温度だけを記録した感覚片。
二番。
《右腕の終業》
イオの足指が、床の振動を数え始めた。
見本は十八秒。
右手が鉄棒を曲げる。
次の瞬間、曲がらない。
本人が笑う。
笑った後、腕をもう一度振る。
何も起きない。
周囲の誰かが言う。
『これで普通に戻れるな』
見本は切れた。
イオは左前腕の刻印を一つ触った。
「誰の」
価へ訊く。
「所有者非公開」
「現在、生きてる?」
「生存確認あり。六月二日」
「仕事」
「非公開」
「売却金の取り分」
「落札額から、抽出費十二、保管費七、仲介二十二、債務相殺最大三十。残り」
「最低二十九%」
「最大五十九」
「債務の内訳」
「本人同意の範囲外」
「同意の確認方法」
「代理人署名」
「本人は」
「署名あり」
「内容、読めた?」
「契約書は読めたと記録」
イオは二番の容器を見た。
「記憶を抜いたら、本人から消える?」
価は、ほんの一瞬だけ答えを遅らせた。
「消えない」
「本人は知ってる?」
「説明条項にある」
「何頁」
「十九頁」
「文字の大きさ」
「六ポイント」
「読めたと記録」
「記録はある」
「分かったとは言ってない」
価の右目が細くなる。
「巴の人?」
「違う。終わった人」
「何が」
「能力」
「人生は」
「まだ」
イオは自分で答えた。
価は二番の外枠へ歩いた。
「市場の仕組みを見せる」
深緑の袖から、白い値札を一枚抜く。
札には、数字がない。
価が二番の外枠へ貼る。
「事前関心、百九十三件。支払意思を申告した者、二十七。最高仮入札、八十四万」
札へ数字が浮かんだ。
《八四〇、〇〇〇》
床が鳴った。
二番の容器を支える鉄枠が、低く沈む。
天井の鎖が張る。
外枠の重量が、数十倍へ増えた。
観客が息を呑む。
価の誓痕、値札〈プライス・タグ〉。
注目と支払意思を、物の重量へ変える。
高く評価された物ほど、簡単には持ち去れない。
同時に、床が耐えられなければ、価値ある物から建物を壊す。
「第一札」
価は言った。
「値段は守る。値段は奪わせる。どちらも本当」
鉄枠の下で、石床に細い亀裂が入った。
「安全率」
イオ。
「三・二」
「古い石床」
「補強済み」
「いつ」
「五月」
「誰が」
「蔵座設備班」
「外部検査」
「六月」
「報告書」
「入口で閲覧できる」
「値段」
「無料」
「怪しい」
価の口元が少し上がった。
「読んでから疑って」
三番から五番が下がる。
《朝四時の別れ》
誰かが駅で、相手の背中を見送る記憶。
《赤錆炉の三分》
工場事故で、停止弁へ手を伸ばせなかった三分。
《借りた名字の夕食》
家族でない家族が、同じ名字を一晩だけ使った食卓。
六番。
《青い薬包四十二》
見本は出ない。
黒い画面に、数字だけ。
《投与間隔 四十二》
《不整脈発生記録》
《所有者による内容非公開》
七番。
《灰色廊下の投与列》
こちらも無音。
八番。
《七番水門・声だけ》
濁流。
命令の声。
火群灯里の息。
九番。
《編集卓十五分》
フィルムを切る鋏。
若い男の声。
『この拒否は、画面を弱くする』
灯里の声。
『弱くなるなら、そのままにして』
鋏が止まる。
見本はそこで終わった。
十番。
《黒雨前夜の配給会議》
机を叩く音。
十二人の声。
誰かが「人数を減らして書け」と言う。
十一番。
《西階段の二度目》
見本なし。
保全中。
十二番。
《竜胆岳・最後の命令》
見本なし。
真正性異議申立て中。
観客席がざわめいた。
「岳だって」
「本物なら、都市史が変わる」
「最後の能力条件が――」
「医療研究へ使える?」
「迅に買わせるべきだ」
イオは、最後の言葉を言った男を見る。
「どうして」
「弟だろう」
「家族なら買う義務がある?」
「他人に買われるより」
「買う金がなければ」
「寄付を」
「寄付した人が見る?」
「公共財にすればいい」
「公共って、何人から」
男は答えない。
価が壇上から言う。
「議論は入札板へ。声だけだと売上にならない」
「全部、売上にする?」
イオ。
「ここは競売所」
「病院じゃない」
「病院も無料じゃない」
「知ってる」
イオは二番を見た。
「売った人、今どこ」
「非公開」
「現在の本人へ還元されてるか、確かめる」
「何を」
「仕事。家賃。治療。映像権」
「契約にある」
「頁は」
「二十七」
「大きさ」
「六」
「小さい字、好きだね」
「紙を小さくすると保管費が下がる」
「人を小さくすると?」
価は答えなかった。
午後三時三十二分。
イオは展示会を途中で出た。
入口で設備報告書を読んだ。
床の安全率は本当に三・二。
ただし、《値札》の同時使用は二枠までという条件がある。
欄外に、価の署名。
《三枠以上は、中央環へ荷重集中。禁止》
禁止を書いた本人が、守るとは限らない。
守らないと決めつけるのも早い。
イオは二番の出品受付番号を、契約公開簿から逆に辿った。
個人名は出ない。
抽出所。
代理人。
債務者番号。
支払い先。
支払い先は、旧灯具工場を改装した月払い宿だった。
徒歩三十八分。
イオの膝なら四十五分。
路面車を使う。
運賃十二環。
待ち時間七分。
未来の話をするとき、イオは時刻を付ける。
《午後四時二十四分に戻る予定》
蔵座の受付へ書き残した。
「戻る必要は」
係員。
「あるか決めるために出る」
午後四時十一分。
月払い宿の三階。
二番の所有者は、廊下の突き当たりで電球を交換していた。
男でも女でもない、二十五歳ほどの人物。
右腕に古い誓痕痕。
脚立の上で、左手だけを使っている。
「秋庭リク?」
イオは受付番号に付いた呼称を読んだ。
「借金取りなら、火曜」
「今日は金曜」
「じゃあ研究者」
「元被験者」
リクが下を見る。
「何の」
「終わった右腕」
脚立が一段鳴った。
「見た?」
「十八秒」
「笑ってた?」
「笑ってた」
「上手く切ったね」
リクは電球をねじ込む。
灯りが点く。
「本当は、その後吐いた」
「入ってない」
「売れないから」
「誰が決めた」
「抽出屋。嘔吐は病歴で、映像価値を下げるって」
「売った理由」
「家賃」
「いくら受け取った」
「先払い、六万」
「落札後」
「残り。借金引かれて」
「記憶は消えた?」
リクは脚立から下りた。
右手で壁を押さえようとして、途中で左へ替える。
「消えるって聞いた」
「契約に、消えないとある」
「小さい字?」
「六ポイント」
「読んだよ。読んだ。でも、抽出したら薄くなるって説明された」
「薄くなった?」
「毎朝、前より濃い」
リクは点いた電球を見る。
「売ったから、思い出さないと損した気がする」
「今の仕事」
「宿の電球。週二日。前は搬送柱を一人で持った」
「賃金」
「前の三分の一」
「映像が売れたら増える?」
「一度だけ」
「研究利用」
「別料金なし」
「再販」
「なし」
「取り消したい?」
リクはすぐ答えなかった。
「金は要る」
「質問は、取り消したい?」
「取り消したら、六万返す?」
「契約だと、抽出費と保管費も」
「じゃあ取り消せない」
「意思と費用を一つにしない」
「費用を払わない人は、簡単に言う」
イオは左前腕の真鍮装具へ触れた。
「退所金、ある」
「払う?」
「まだ決めない」
「善人じゃない」
「善人なら、先に払う?」
「たぶん」
「たぶんは使わない」
リクが笑った。
見本の笑いとは違う。
「今の、売れる?」
「売らない」
「価値ない?」
「値段を言わない」
「違い、ある?」
「あると思いたい」
イオは、リクの現在を紙へ書いた。
《宿設備補助》
《週二日》
《旧賃金の三分の一》
《売却金、先払い六万》
《抽出後も記憶継続》
《取消希望 費用提示前の回答を保留》
「署名する?」
「公開先」
「競売の所有確認。名前は出さない」
「リクは呼称」
「変える?」
「今日はそれで」
「明日は」
「明日聞いて」
イオは日付を書く。
《八月九日だけ有効》
リクは左手で署名した。
「腕、戻したい?」
今度はリクが訊いた。
「質問の値段は」
「無料」
「怪しい」
「じゃあ一環」
イオは硬貨を一枚渡した。
「戻したい日もある」
「今日は」
「今日は、右腕を売る人の話を聞きに来た」
「答えてない」
「明日聞いて」
イオは階段を下りた。
予定より七分遅い。
遅延理由は、電球一個と、答えなかった質問。
午後二時十六分。
イオは、入札者側の待合区画へ入った。
価の言うとおり、全員が記憶を娯楽にしたいわけではなかった。
白衣の医師は、能力反証による筋壊死の症例を集めている。過去三年で患者を二人失った。
「二番の映像があれば、右腕の過負荷が始まる二秒前の血流を見られる」
「リクへ説明した?」
イオ。
「仲介人を通して」
「本人へ」
「接触は契約違反」
「契約を守って、人を知らない」
「患者を救いたい」
「リクも患者だった」
医師は黙った。
「研究へ使うなら、現在のリクを診る?」
「利益相反になる」
「便利」
「研究者が治療すると、同意へ圧力が掛かる」
「正しい」
「では何が不満です」
「正しい仕切りの向こうに、人が落ちたまま」
「それを埋める制度が要る」
「入札より先に言って」
医師は名刺を差し出した。
イオは受け取らない。
「リクへ渡す?」
「本人が希望すれば」
「その言い方を書いて」
医師は名刺の裏へ、《本人から連絡希望がある場合のみ診療相談。記憶売却と無関係》と書いた。
イオはそれを封筒へ入れた。
次の入札者は、舞台音響師だった。
八番の死者の声を、災害劇へ使いたいという。
「本物の声があると、観客は信じる」
「何を」
「死者がいたこと」
「俳優の声だと死者はいない?」
「迫力が違う」
「遺族は」
「利益を分ける」
「聞きたくない遺族にも?」
「使ったと知らせない」
「知られないなら、傷つかない?」
「そうは言っていません」
「今、言った」
音響師は唇を噛む。
「私は、事故を忘れさせたくない」
「誰に」
「観客に」
「亡くなった人へは」
「何もできない」
「遺族へは」
「利益」
「聞かせない選択は」
「作品が成立しない」
「作品が困る」
「人も困る」
「どっちを先にする?」
音響師は答えなかった。
三人目は、六番と七番へ同額を入れている中年の女だった。
研究者でも、収集家でもない。
「妹が、同じ投薬列にいたかもしれない」
女は言った。
「名前が記録から消えた。死んだのか、別の施設へ移ったのか分からない。六番の薬包数と七番の並びを見れば、いたかどうか分かる」
「他の人の薬歴も見る」
「顔は要らない」
「薬だけでも、人が分かることがある」
「妹を探すのは悪い?」
「悪いと言ってない」
「じゃあ入札していい?」
「私が決めない」
「皆それを言う」
「あなたも、他の人の薬歴を決めない」
女の目に涙が溜まった。
「待てって?」
「待ってる間の費用を、誰が払うかも決める」
「妹がもう死んでたら」
「待った時間は戻らない」
「なら急いで」
「急ぐ。勝手には見ない」
女は入札札を握り潰した。
「正しい人は、遅い」
「速い正しさもある」
「何」
「今、あなたの名前を聞かない」
女は顔を上げた。
「妹を探すために、あなたまで商品にしない」
イオは、女の入札目的を《家族探索》ではなく、《本人が接触を希望する場合の限定照合希望》と書き換えた。
「同じじゃない」
女。
「同じにしない」
「会えないかもしれない」
「はい」
「嫌な人」
「知ってる」
最後の入札者は、能力記録を壁一面に集める収集家だった。
「人間の極限は美しい」
彼は言った。