第417話 第三章「誓痕停止区画」前編

十一月二十五日 午前七時五十五分

 環玉樹は、入口を住所にできない場所が嫌いだった。

 青灯再演劇場の正門には番号がある。

《旧操車場第九門》

 門を抜けた先にも番号がある。

《参加者受付一》

《更衣区画二》

《誓痕停止区画・北境界三》

 問題は、三の先だった。

 街が動く。

 昨日まで東にあった集合住宅が、今日は南へ載せ替えられている。市場の角が病院斜路へ接続し、地図上の四番街路が線路の回転で七番へ変わる。

 住所とは、帰る場所につける名前だ。

 帰る場所が動くなら、名前も動く。

 タマキは配達用鉄箱へ、三種類の札を入れていた。

 固定住所。

 現在位置。

 移動予定。

 どれが正しいかではない。

 いつ正しかったかを書く。

「箱、重い?」

 紅葉カナタが訊いた。

 左右で袖丈の違う稽古着。

 右足首へ薄い固定帯。

 面は着けず、箱へ入れている。

「十二・四キロ」

「私の演出ノートより軽い」

「嘘」

「比喩です」

「何キロ」

「測っていません」

「じゃあ軽いか分からない」

「朝から厳しいね」

「仕事」

 カナタは演出ノートをタマキの箱へ入れようとした。

 タマキは蓋を閉める。

「送り主」

「紅葉カナタ」

「受取人」

「未来の私」

「住所」

「未定」

「受けない」

「能力を使えば、未来へ届くかもしれない」

「使わない」

「なぜ」

「条件違う」

 タマキは胸元から、防水札を一枚出した。

 送り主。

 受取先。

 目的。

 三欄は空白。

 封緘便〈シールド・ルート〉は、発現してから一か月余りしか経っていない。

 使えた回数も少ない。

 使えない条件の方が、まだ多い。

 送り主本人が選ぶ。

 受取側が受入れる。

 目的を同じ言葉で確かめる。

 封を閉じる。

 途中で本人が封を切れば、経路は消える。

 人を軽くしない。

 扉を開けない。

 酸素を増やさない。

 目的地が安全だと保証しない。

 できることが少ない。

 だから、何をしたのかが分かる。

「停止区画へ入れば、その少ないこともできない」

 カナタが言った。

「知ってる」

「怖い?」

「左耳はもう悪い。方向をなくすのは、前にやった」

「前にやったことは、怖くない?」

「前にやったから怖い」

 タマキは緑のニット帽を深くした。

 左耳の奥には、水が残っているような圧迫感がある。

 実際の水はない。

 鼓膜の向こうへ、傾きだけが残っている。

 高い所。

 水上。

 暗い通路。

 視線が遅れて、床が一度横へ流れる。

 停止区画で封緘便が消えた時、それが能力の停止なのか、耳の障害なのか、分からなくなるかもしれない。

「入らない選択もある」

 カナタは言った。

「演出責任者として?」

「紅葉カナタとして」

「違い」

「責任範囲」

「どっちが料金払う」

「演出契約」

「じゃあ演出責任者」

「情緒がないなあ」

「ある。別料金」

 カナタが笑う。

 その笑いが本物か演技か、タマキには分からない。

 分からない時は、中身でなく受領条件を見る。

「僕は伝令役を受けた。能力なしで届ける訓練も仕事」

「途中で止める?」

「止める」

「誰へ言う?」

「近くの二人。演出。受付。届かなければ札を置く」

「よし」

「命令?」

「確認」

「受領」

 停止区画の境界には、艶のない黒い帯がある。

 帯の手前で、六十四人が点呼を受ける。

 英雄役、八。

 生活技能役、二十四。

 避難者役、三十二。

 役名ではなく実名を先に呼ぶ。

 カナタが契約へ入れた条件だ。

「竜胆迅」

「いる」

「火群七瀬」

「午前七時五十九分、在」

「獅堂凱」

「いる」

「伏見轟」

「いる」

「環玉樹」

「受領待ち」

 係員が顔を上げた。

「在、でお願いします」

「何を受け取ったら在?」

「点呼です」

「点呼を受け取る?」

「名前へ返事を」

「返事した」

「形式が」

「届いた?」

 係員は諦めた。

「届きました」

「受領」

「水科イオ」

「いる。零時までは」

「紅葉カナタ」

「ここに」

「鐘巻十夜」

「残り全日程、参加者は健康に留意して――ここで選手、普通に返事。いる」

「百舌忍」

 透明防水服の少女が、左手を上げた。

 右手の薬指と小指は、まだ痺れている。

 腰の音の出ない鈴が揺れる。

 彼女は携帯打鍵器へ入力した。

《いる。声で数えるな》

 係員が頷く。

「八城レム」

「試験側。境界外から確認します」

 レムは黒い帯の外に立っている。

 薄青の瞳。

 八本の髪留め。

 関節線の淡い光。

 停止区画へ入る参加者と、外から採点する試験官。

 タマキは、その位置を覚えた。

 何かあった時、レムへ報告するには黒い帯を越える必要がある。

「鐘巻さん」

 医療係が十夜へ近づく。

「植込み機器の通信確認」

「機械は元気。本人は値引き待ち」

「胸部へ強い衝撃を受ける動作は禁止です」

「英雄に殴られる役、断って正解」

「救助補助も、重量物は持たない」

「軽い人間だけ?」

「人間を重量で選ばないでください。搬送具、連絡、脈拍確認」

「選手、初めて人ではなく道具を持ちます」

 十夜は笑った。

 笑いながら、胸の左側へ手を置かない。

 触れられるのを嫌う。

 犬飼豪は、今日はいない。

 出演契約を断ったからだ。

 受身の稽古は昨日まで。

 転倒後の呼吸。

 指と足を動かす。

 助ける者を交代する。

 舞台へ上がらない人の教えだけが、舞台に入る。

 タマキの番になった。

 黒い帯へ右足を置く。

 何も起きない。

 左足を入れる。

 胸の奥で、方角が消えた。

 光が消えたのではない。

 封緘便は、普段も常に光っているわけではない。

 それでも、宛先を正しく書けば、どこかに一本だけ続く道があると身体が知っていた。

 今はない。

 世界が、全部同じ重さになった。

 タマキは防水札へ書く。

 送り主、環玉樹。

 受取先、北境界受付。

 目的、停止確認の報告。

 受付側は、目の前で受入れを示した。

 封を閉じる。

 いつもなら、足の裏のどちらかへ細い引きが生まれる。

 右。

 左。

 斜め。

 階段。

 何もない。

「どう」

 迅が訊いた。

「届かない」

「受付、三歩だ」

「知ってる」

「道がない?」

「能力の道がない。普通の道はある」

「歩ける?」

 タマキは一歩進んだ。

 床が少し左へ傾いた気がした。

 止まる。

 実際の床は水平。

「歩ける」

「遅くていい」

「料金同じ?」

「俺に聞くな」

「じゃあ勝手に決めないで」

 迅は口を閉じた。

 タマキは三歩で受付へ行き、札を渡した。

「受領」

 受付係が印を押す。

「能力停止を確認しました」

「僕も確認」

 札を受け取る。

 能力がなくても、届けられる。

 その事実は安心ではなかった。

 できることを証明したら、できない時にもやらされる。

 大人は、成功を前例と呼ぶ。

「記録」

 タマキは七瀬へ言った。

「何を」

「三歩なら届いた。もっと遠い時に届くとは限らない」

「時刻」

「八時四分」

「八時四分十三秒」

「そこまで要る?」

「要らないかもしれない。残す」

「公開は」

「停止区画の運用記録。耳の状態は本人確認」

「耳は非公開」

「了解」

 七瀬は三脚を低くした。

 カメラのレンズが、タマキの顔ではなく足元を撮る。

 左右で色の違う靴紐。

 黒い境界。

 三歩の距離。

 凱が境界へ入る。

 胸の割れた鐘へ触れる。

 王路不退〈キングス・ロード〉の圧は生まれない。

 声を出す。

「俺は、これから――」

 いつもの深い声。

 人は聞く。

 だが、空気が道を開けない。

 凱は少し息を吸い直した。

「命令ではない。確認する。俺の声は聞こえるか」

 六十四人が、それぞれ返す。

 聞こえる。

 右は聞こえない。

 後ろまで届かない。

 声は聞こえるが言葉が不明瞭。

 口の動きだけ見える。

 全員の返事が揃わない。

 凱は怒鳴らない。

「復唱担当を置く。希望者」

 三人が手を上げた。

 一人は声が大きい。

 一人は手話ができる。

 一人は文字板を持っている。

 百舌が左手で打つ。

《私は手話。声の代わりではない。別媒体》

「了解した」

 凱は言った。

 迅が境界へ入る。

 踵で床を擦る。

 一歩、退く。

 二歩。

 三歩。

 七退一還〈セブン・リターン〉は沈黙したまま。

 七歩まで行く。

 赤い七結びは光らない。

 空気の密度も変わらない。

 返す一撃は生まれない。

 迅は八歩目を踏まず、元の位置へ戻った。

「どう」

 タマキ。

「疲れる」

「普通」

「前からだ」

「能力ある時、かっこつけてた?」

「誰に」

「知らない」

 迅は右手を開閉した。

 環指と小指が、寒さで少し遅い。

 停止区画は能力を消す。

 古い傷は消さない。

 轟が入る。

 一人門はない。

 巨大な身体はある。

 左肩の手術痕もある。

 壁を二回叩く。

「模型。軽い」

 技術員が言う。

「実物の七割です」

「人、挟まれば十分重い」

「想定荷重は」

「想定、誰の身体」

 轟は床へ耳を当てた。

「巻上、動いてる」

「待機回転です」

「止める時は」

「制御室から」

「手動は」

「西巻上塔」

「遠い」

「緊急時は自動停止します」

「自動が止まらなかった時」

 技術員は図面を開いた。

 轟の欠けた前歯の隙間で、短い息が鳴る。

「その顔、嫌い」

「どの顔です」

「図面に無い顔」

 八時十七分。

 六十四人全員が、停止区画へ入った。

 能力は沈黙した。

 呼吸だけが増えた。

 八時二十分。

 訓練開始の鐘が、一区画だけ遅れて鳴った。

 舞台上では遅れも演出になる。

 避難訓練では、遅れた鐘は別の命令になる。

 北の住宅模型では、もう煙筒から白い蒸気が上がっていた。西の市場模型では、木箱役の発泡材が通路へ転がり始めている。中央の広場には、黒雨当日の混乱を再現するため、薄い灰色の紙片が降った。

 紙片には、同じ文字が印刷されている。

《北へ》

《北へ》

《北へ》

 実際の出口は南だった。

「史実どおりです」

 案内係が言う。

「当時、誤った避難札が大量に撒かれました」

「今も撒く?」

 タマキは一枚拾った。

「誤情報下の判断訓練です」

「正しい札は」

「英雄役が配ります」

「英雄役が届かなかったら」

「訓練上、届きます」

「今の答え、住所に書けない」

 係員は困った顔をした。

 タマキは紙片の裏へ時刻を書く。

 八時二十一分。

 誤誘導札。

 実出口、南。

 配布者、機械。

 訂正者、未定。

 英雄役の一人が高台へ立った。

 凱ではない。

 若い訓練生だった。胸に《北塔救助者》の札を下げ、台本どおり右手を上げる。

「皆、俺の声を聞け! 正しい道は――」

 声が細い。

 停止区画の外なら、彼の誓痕が肺と喉を補助するらしい。

 中ではただの十九歳の声だった。

 前列には届く。

 後列へ届かない。

 後列の避難者役が、台本どおり恐慌の声を上げる。声を上げる役が、訂正より大きい。

「北だ!」

「押すな!」

「子どもがいる!」

「英雄はどこだ!」

 訓練の恐慌は、決められた順番で始まる。

 決められた順番で、人を踏む。

「声を止めろ」

 凱が言った。

 声に圧はない。

 それでも近くの三人が振り向く。

「台本です」

 進行係が返す。

「聞こえない者が出ている」

「復唱担当を使ってください」

 凱は百舌へ手を向けた。

 百舌が左手で大きく示す。

《南》

《押さない》

《一人分、空ける》

 文字板担当が同じ三語を書く。

 声の大きい担当が復唱する。

「南! 押すな! 一人分あけろ!」

 言葉が短いと届く。

 避難者役の一人が、台本から外れて立ち止まった。

「一人分って、どれくらい」

 タマキが両肘を広げる。

「このくらい」

「君、小さい」

「轟なら通れない」

「基準が極端だ」

 迅が後ろから言った。

「じゃあ迅一人」

「俺は単位じゃない」

「便利」

「断る」

 押し合いが少し緩む。

 笑った人がいた。

 笑うと、息を吐く。

 息を吐くと、肩が下がる。

 混乱を止めるのは、英雄の一声とは限らない。

 変な基準で開いた隙間かもしれない。

 最初の課題は、南の仮設門へ全員を移すことだった。

 距離、百八十メートル。

 途中に倒壊路地、階段、煙区画。

 役に従えば、英雄八人が道を開き、生活技能役が後方を支え、避難者役は指示に従う。

 タマキは避難者役の札を見た。

《十二歳。家族と離別。英雄の右袖を掴む》

「年齢違う」

「役です」

「家族、設定されてる?」

「脚本上は」

「名前」

「ありません」

「じゃあ離別できない」

「演技上の関係です」

「誰の袖」

 進行係が台本を見る。

「三番英雄役」

 三番英雄役は、二十六歳の女性だった。

 右腕に古い火傷痕がある。高所清掃の仕事をしていて、子どもの扱いは苦手だと事前票へ書いている。

 タマキは袖を掴まなかった。

「演じてください」

「受取人がいない」

「英雄がいます」

「家族じゃない」

「訓練の進行が」

「僕が掴むと、右腕動かしにくい」

 三番英雄役が、小さく頷いた。

「そう。右の握力、弱い」

「じゃあ左?」

「左は工具持つ役」

「両方使う」

「台本では」

「台本、腕増やしてくれない」

 三番英雄役が笑った。

 進行係は笑わなかった。

「環さんは、鉄箱を持って避難してください。英雄役と離れないこと」

「鉄箱、僕の仕事道具」

「役の小道具では」

「違う」

 タマキは箱を背負い直した。

 十二・四キロ。

 能力はない。

 左耳は傾く。

 床は動く。

 普通に重い。

 それでも、重さの出所が分かる。

「迅」

「何」

「南門まで、何歩」

「知らない」

「数えて」

「自分で数えろ」

「僕、左右間違うかも」

 迅は前を見たまま答えた。

「俺が前。お前は札。三十歩ごとに止まる」

「命令?」

「提案」

「料金」

「何で俺が払う」

「道案内」

「能力ない」

「だから人件費」

 迅は振り返った。

「高い?」

「事故割増」

「まだ事故じゃない」

 その言葉を言った直後、床が震えた。

 小さい。

 台本にある揺れなら、鐘が二回鳴る。

 鐘は鳴らない。

 轟が遠くで顔を上げた。

「止まれ!」

 声が模型壁へぶつかる。

 可動街区の下で、金属が一度、噛み損ねた。

 がん。

 間を置いて、もう一度。

 ががん。

 住宅模型が、予定とは違う方向へ三十センチ動いた。

 路地の出口が細くなる。

 煙区画の支柱が傾く。

 上に載せていた展示瓦礫が、固定爪から外れた。

 タマキは音より先に、床の傾きを感じた。

 左へ流れる。

 耳のせいだと思った。

 だから一歩遅れた。

「下!」

 迅の手が、ニット帽ごと頭を押した。

 発泡材の梁が空を切る。

 軽いはずの梁は、端に金属の演出灯を抱えていた。

 灯具が路面へ叩きつけられ、透明カバーが割れる。

 破片が跳ぶ。

 迅が右腕で顔を庇う。

 タマキは鉄箱を立て、二人の前へ盾にした。

 硬い音。

 箱の側面へ、白い傷が走る。

 避難者役の一人が叫んだ。

 今度は台詞ではない。

「動かないで!」

 七瀬の声。

「午前八時三十四分二十一秒。予定外の街区移動。北住宅模型、南西へ約三十センチ。灯具落下。負傷確認を開始する」

 時刻が入る。

 今が演技でないと、時間が区切る。

 しかし高台の進行係は、赤旗を上げなかった。

「継続してください! 障害物追加は想定内です!」

「追加じゃない」

 轟が支柱へ走る。

 左肩を上げず、右腕と腰で傾きを受ける。

 模型とはいえ、壁一枚の重量は人より重い。

「巻上止めろ!」

「制御室へ連絡中です!」

「待機回転って言ったな」

「安全制御が――」

「止まってない」

 轟の足元で床板が鳴った。

 凱が近くの四人へ指示する。

「壁へ触るな。東へ二歩。走らない」

「英雄の避難経路は南です!」

 進行係が叫ぶ。

「南が狭まった」

「脚本上、英雄が瓦礫を除去します」

「除去できる物か確認していない」

「訓練は継続です!」

 声が重なる。

 どちらを聞くか。

 役札は明確だった。

 《避難者は英雄の指示に従う》

 英雄役の八人が、それぞれ違う方角を見た。

 誰が英雄か。

 どの指示が英雄のものか。

 タマキは箱を開けた。

 固定住所札ではない。

 現在位置札。

 赤い札へ書く。

《南門 閉塞幅確認中》

《北住宅 支柱傾斜》

《東路地 通行可 一列》

《灯具破損 足元注意》

「配る」

 迅が言った。

「僕が」

「耳」

「足で行く」

「俺も」

「役は」

「逃げる群衆」

「ちゃんと逃げて」

「お前からは逃げない」

「料金高い」

 二人で東路地へ入る。

 煙は水蒸気だった。

 視界は二メートル。

 能力の道はない。

 迅の七歩もない。

 タマキの封緘もない。

 三十歩ごとに止まる。

 路面へ靴先を当てる。

 壁へ手を置く。

 次の札を結ぶ。

 結び目は、濡れてもほどける形。

 一回引けば開く。

 二回引けば固定。

 配達の結び方だ。

「ここ、段差」

 迅。

「何センチ」

「六」

「札」

「書け」

「手、空いてる?」

「左だけ」

「僕も箱」

 二人とも空いていない。

 迅は口で鉛筆を抜いた。

「汚い」

「お前が書け」

「鉛筆返す時どうする」

「洗え」

「料金」

「増やすな」

 タマキは鉛筆を受け取った。

 六センチ。

 右壁、熱なし。

 十七歩先、分岐。

 東門、開。

 札を結ぶ。

 後から来た避難者役が、その札を見て自分で曲がる。

 英雄の袖を掴まない。

 名前のない家族を探さない。

 現在の段差を越える。

 南の方で、大きな音がした。

 住宅模型の外装板が倒れた。

 地面が揺れる。

 煙の向こうから、三番英雄役が走ってきた。

「南門、塞がった!」

「何人いる」

 迅。

「奥に十一。うち二人、転倒。大きな怪我は見えない」

「別出口」