第442話 第三章「独房の人数」後編
配膳口から、檻が紙を差し入れた。
正式名簿ではない。
番号と、収容令の分類だけ。
七十二行。
全行に、同じ文。
《能力不安定者または関連者》
「正式?」
「正式」
「ひどい」
「知ってた」
「見ると、ひどい」
イオは紙と壁を並べた。
紙は一行。
壁は七十二の違い。
「檻」
「何」
「これ、外へ出せる?」
「壁は運べない」
「紙へ写す」
「没収される」
「壁を審理へ」
「部屋ごと?」
「そう」
檻の青灰色の目が、配膳口の隙間から見える。
「独房、動かす?」
「動かさない」
「審理が外」
「外へ行けないなら」
イオは七十二の四角を見る。
「審理を中へ入れる」
「誰が」
「外の言葉の人」
「真琴?」
「巴」
「二人、喧嘩する」
「それも記録」
檻は配膳口を閉じた。
壁のいちばん下に、一つだけ大きな空欄がある。
《結論》
イオは、そこへ何も書かなかった。
七十二人の結論を、一人で埋めるつもりはなかった。
代わりに、その上へ時刻を書く。
《十二月二十九日 十二時六分》
その時点で、七十二人はまだ中にいた。
同じ場所にいることだけが、彼らに共通していた。