第509話 第一章「暫定命令」前編
四月二十日 午前八時十六分
命令には脚がない。
それでも、御厨朝より速く街を歩いた。
中央行政回廊の南口へ、象牙色の紙が貼られている。
昨日まではなかった。
糊はまだ乾いておらず、四隅のうち右下だけが風に浮いていた。
《中央安定維持に関する第二四時間暫定命令》
《命令番号 C―二二〇四―七二》
《発効 四月二十日 午前八時》
《失効 四月二十一日 午前八時》
《安全上必要と認定された場合、所管部署の更新処理により継続する》
朝は黒い杖を左手へ置き、紙の前で止まった。
杖。
右足。
間。
左足。
三月の事故から覚えた歩き方は、命令より遅い。
遅いから、読める。
紙の末尾に、発令者の氏名はなかった。
《中央危機調整責任者》
人の名前に見える職名だった。
その下に、小さな字がある。
《運用設計参考――国立誓務学苑・御厨朝提出原案》
「参考にした覚えはありますか」
隣で久世が訊いた。
朝は答える前に、回廊を見た。
床の白と青の光帯は消されている。
同じ歩幅を強制した振動板も停止したまま。
代わりに、今朝から新しい鉄柵が南口を三つへ分けていた。
《官庁勤務者》
《医療・給水・交通》
《その他》
三つ目の列だけが、動いていない。
鉄柵の前で、看護補助員の女が身分札を見せている。
「病院東。夜勤明けです。帰宅します」
「暫定命令により、医療関連従事者の移動は所属確認後です」
「所属は見せました」
「交代者の到着確認が必要です」
「交代者は、列車の運休で遅れています」
「では、到着まで待機を」
「十六時間働いています」
「安全維持のためです」
「誰の安全ですか」
警備員は、紙を見る。
「中央危機調整責任者の命令です」
「名前を聞いています」
警備員の口が閉じた。
朝は杖を一歩出した。
右足。
間。
左足。
「当該命令の発令責任者名を確認します」
朝が言うと、警備員は彼女の顔と、壁の紙を見比べた。
「御厨朝さん」
「はい」
「参考原案の提出者」
「その表記はあります」
「では、あなたの命令では」
「違います」
警備員の肩がわずかに落ちた。
安心ではない。
次に誰へ回せばよいか分からなくなった姿勢だった。
「発令者は中央危機調整責任者です」
「現在の責任者名」
「確認します」
「今、お願いします」
「窓口へ照会を」
「あなたが受領した命令に、発令者名はありませんか」
「職名があります」
「職名の後ろにいた人を確認してください」
「勤務中です」
「だからです」
朝は、獅堂凱の言い方を借りた。
借りたことを、本人へ報告する必要はない。
言葉に所有者を付けすぎると、会話が領土になる。
だが、命令は別だった。
警備員が受信具へ指を当てる。
「南口警備。第二四時間暫定命令の発令者個人名を確認」
『職名で有効です』
「個人名」
『照会目的』
「移動制限を受けた者への説明」
『中央危機調整責任者』
「現在、誰ですか」
通信が止まった。
看護補助員が鉄柵へ背を預ける。
「名前を訊くと、帰れますか」
「分かりません」
朝は答えた。
「でも、分からない人の命令で残すことはできません」
「今、残されてます」
「はい」
「謝りますか」
「私の原案が使われた範囲を確認してから、私の範囲へは」
「長い」
看護補助員が言う。
「今の私に必要なのは、椅子です」
久世がすぐ折り畳み椅子を出そうとした。
朝は止めない。
自分で出す必要はない。
ただし、看護補助員へ訊く。
「使いますか」
「使います」
「座る場所は」
「柵の外。勤務を終えた側」
久世は椅子を柵の外へ置いた。
警備員が迷う。
「待機者は内側です」
「私は、勤務を終えました」
看護補助員は柵を越えない。
椅子だけを外へ置き、自分は内側から座る。
身体は命令区域。
足は帰宅側。
「これで違反?」
「規定にありません」
「じゃあ、今だけ勝ち」
朝は笑わなかった。
警備員も。
看護補助員だけが、目を閉じた。
受信具が鳴った。
『中央危機調整局、芒野澄子』
警備員が背を伸ばす。
「発令責任者ですか」
『現在の代理統括です。発令処理を行いました』
朝は受信具へ近づく。
杖の先が、柵の足へ触れない位置で止まる。
「御厨朝です。南口で、夜勤を終えた医療従事者が交代者未到着を理由に待機させられています」
『暫定命令の運用です』
「あなたが待機を決めましたか」
『医療維持局の交代確認が未了です』
「芒野澄子さんは、この人を残す判断をしていますか」
通信の向こうで、紙をめくる音がした。
『個別の氏名と勤務時間は把握していません』
「なら、現在の判断者ではありません」
『発令者です』
「発令したことと、今この人を残すことを分けてください」
看護補助員が、目を開ける。
「私だけ帰すなら、嫌です」
朝は振り返った。
「理由を聞いてよいですか」
「同じ列に、夜勤明けがあと六人いる。私だけ長く働いた顔をして帰るのは嫌」
「勤務時間は同じですか」
「十四時間から十七時間。病棟も違う」
「全員の帰宅を求めますか」
「求める、は違う。帰るか、残るか、本人に聞いて」
警備員が列を見る。
白衣。
給水設備員。
薬剤庫の搬送係。
身分札だけでは、誰が夜勤明けか分からない。
朝は通信へ戻る。
「個別例外ではなく、勤務終了後十四時間を超え、具体的な引継ぎ対象が示されていない者について、本人選択を確認する暫定運用を提案します」
『今、運用を変える権限は』
「あなたにありますか」
『代理統括として、現場照会へ回答できます』
「判断者名を残してください」
芒野は、すぐに答えなかった。
『芒野澄子。南口に限り、午前九時まで。勤務終了後十四時間超、具体的引継ぎ対象なし、本人が帰宅を選択した場合、退出を認めます。医療維持局へ同時照会します』
「午前九時以後は」
『再判断』
「自動更新は」
『しません』
「拒否窓口」
『南口警備責任者を通じて、私へ』
朝は警備員を見る。
「受けますか」
警備員は、壁の命令書ではなく、自分の受信具を見た。
「受けます。南口警備、篠原悟」
「本人確認を」
篠原は、列へ声を掛ける。
「勤務終了後十四時間を超え、具体的な引継ぎ対象を示されていない方。帰宅、待機、所属へ再照会の三つから選べます。理由は言わなくて構いません」
七人が手を挙げた。
帰宅、四人。
待機、一人。
再照会、二人。
看護補助員は帰宅を選ぶ。
椅子から立つ前に、朝へ言った。
「名前は出さないで」
「公開記録へは、病院東の看護補助員。限定記録へ氏名を残すかは」
「残す。家族には送らない」
「受領」
椅子は、次に待機を選んだ給水設備員へ渡された。
一人が帰れると、全員が救われるわけではない。
一人の例外を作ると、制度が直るわけでもない。
それでも、帰宅を選んだ四人は柵を通った。
命令が初めて、人の名前によって少しだけ狭くなった。
午前八時二十九分。
同調命令審理は、開始前に延期された。
理由は、新しい暫定命令の発効。
審理室へ入るはずだった朝は、廊下の端の椅子へ座っている。
椅子の中央ではなく、右端。
黒い杖は左へ立てかけた。
机の上には、壁から剥がした命令書の写し。
青いインクで、三か所に線を引いた。
《複数の移動経路を維持すること》
《選択しない者へ不利益を与えないこと》
《更新時、異議と保留を再確認すること》
朝が十九歳になる前に書いた原案の一部だった。
今朝の命令では、こう変わっている。
《移動経路を中央で統一する》
《未選択者は安全確認まで待機する》
《安全上必要な場合、所管部署が更新する》
「似ていますか」
久世が訊く。
「似ています」
「同じですか」
「違います」
「では、無断流用」
「そう言うと、私の加担が小さくなります」
「あなたは更新へ署名していない」
「更新を可能にする考え方へ署名したことがある」
「条件は削られています」
「削れる位置へ置いたのは私です」
久世は反論しない。
朝の母なら、行政文書の一般的な運用だと言っただろう。
弟なら、姉の名が使われているのは名誉だと言ったかもしれない。
二人とも、ここにはいない。
朝は紙の角を揃えた。
「現在の影響」
久世が別紙を読む。
「中央官庁群への通行制限。医療従事者の交代確認。上水設備員の勤務延長。十二人を超える集会の事前届出。監視節点の一部再稼働。元能力者への移動先確認」
「一枚の命令で?」
「本紙は一枚です。別表が五冊」
「一枚と言わないでください」
「では、一件」
「一件とも言いたくありません」
「何と」
「まだ分かりません」
分からないと言うと、久世は安心した顔をしない。
朝が正しさへ近づいた証にもならない。
ただ、空欄へ《未分類》と書いた。
扉が開く。
紅葉カナタが入ってきた。
金髪は舞台用ほど明るくない。
右半分が朱、左半分が群青の面は、腰の箱へ入れている。
衣装ではなく、黒い稽古着。
右足首へ薄い固定帯。
「審理、延期?」
「暫定命令で」
「便利だね。裁く日を守るために、裁く日を止める」
「あなたの稽古は」
「十二人を超えるから延期。十一人に減らせと言われた」
「十二人目は」
「照明」
「人ですか」
「照明係」
「設備だと思いました」
「役所の人も同じ顔をした」
カナタは椅子を三つ見た。
中央を選ばず、壁際へ座る。
「私へ何か」
「行政放送の説明役を頼まれた。新しい命令は、市民の支持を集めて継続可否を決めるらしい」
「支持」
「視聴数、拍手入力、退出率。三つを合わせる」
「拍手を、命令支持へ変える?」
「変える案。私は、断る予定だった」
「予定」
「断るだけだと、別の役者がやる」
カナタは面の箱を指で叩く。
「朝。多数が欲しい役所と、拍手が欲しい役者は、相性がいい」
「悪い意味で」
「相性に善悪はないよ。結婚後に分かる」
「経験がありますか」
「ない。台詞」
「あなたは、本当のことを言うときも台詞と説明します」
「朝は、台詞を言うときも議事録みたいだ」
「褒めていますか」
「記録」
久世が小さく咳払いした。
「御厨さん。現在の命令は二十四時間で失効します。待てば」
「更新されます」
「更新者を確認して止めれば」
「現在の発令者も分からない」
朝は、命令書の職名欄へ指を置く。
「この文書は、誰も署名していないのに、全員へ従えと言っています」
「機関が署名しています」
久世。
「機関は審理室へ座れません」
カナタが言った。
「役者なら、代役を立てる」
「代役へ責任を移しますか」
「移すと、だいたい揉める」
「役者の話ですか」
「人間の話」
朝は紙を折らない。
椅子から立ち上がる。
右足へ力が入るまで、一拍待つ。
「協力を頼みます」
カナタが自分を指す。
「私へ?」
「多数の支持を集めない説明方法」
「人気役者へ頼む仕事として、かなり性格が悪い」
「断りますか」
「期限」
「現在の命令が失効するまで二十三時間二十一分。全体は、更新経路を確認するまで」
「終わりが分からない」
「分からないものを、分かるようにします」
「それ、役所の悪役が言う台詞だよ」
「あなたは?」
「出演条件を出す」
カナタは三本の指を上げた。
「無観客。途中退出を記録。拍手と視聴数を賛意に数えない」
「受領します」
「まだ二つ目まで」
「三つ言いました」
「無観客が一。途中退出が二。拍手と視聴数は別だから三と四」
「四条件」
「そう。数え方を決めた人が、結果を決める」
その時、久世が紙束を抱えて戻った。
「中央端末の現在有効枝です」
束は、朝の膝より高い。
「何本」
「端末上は七十二」
カナタが眉を上げる。
「命令番号の末尾も七十二。偶然?」
「親命令の管理番号と、子枝の現在数が一致しています。番号を数に合わせたのか、七十二番目の親命令へ七十二枝が集まったのかは未確認」
「役所は、偶然まで説明が長い」
朝は一枚目を取る。
《医療群一》
二枚目。
《給水群一》
次。
移動。
集会。
監視。
「五種類?」
「端末分類は五群です。ただし、各部署は命令ではなく、措置、認定、期間、附帯処分と呼んでいます」
「七十二本の命令、と放送していい?」
カナタ。
「まだ」
「なぜ」
「一枚の親命令の細目だと主張する部署もあります。七十二本の独立命令だと扱う部署も」
「受ける人には」
「七十二の別の制限として届いています」
「なら七十二」
「法的な数え方は未確定」
「また地味になる」
「地味なまま言ってください」
カナタは、紙束を持ち上げようとする。
右足首へ体重をかけないため、椅子に座ったまま両手で引く。
「重い」
「紙です」
「紙は軽いって言う人、信用できない」
「一枚ずつなら軽い」
「七十二人へ、一枚ずつ返す?」
「発令者だけではありません。更新、受領、拒否も」
「人数、もっと増える」
「はい」
カナタは一枚目を机へ置く。
「じゃあ、放送の最初に言う。七十二は、七十二人の悪人の数じゃない」
「まだ悪人の数を調べていません」
「官僚は冗談を殺す」
「役者は、数字を物語にしすぎます」
「お互い必要そうだね」
「期限付きで」
朝は、七十二枚を一冊へ綴じなかった。
五群へ分け、さらに一枚ずつ離す。
一つにまとめれば、また一人の判断で動くからだ。
分け終える前に、印刷機が一枚吐いた。
《医療群四番 更新版二》
さきほどの一枚には、《更新版一》とある。
「古い方、廃棄します」
記録係が手を伸ばした。
「待ってください」
朝。
「版二が有効です。版一は誤情報になります」
「誤情報になった時刻を残します」
「同じ棚へ置くと、取り違えます」
「別の箱へ」
「箱名」
記録係は考える。
「失効版」
「まだ失効していません。上書きされた部分と、生きている部分があります」
「旧版」
「古いだけでは、使ってはいけない理由が分かりません」
カナタが言う。
「役者なら《没稿》」
「没になっていない台詞もあります」
「じゃあ、《今は使わないが、捨てると困る》」
「長い」
「正式名称は役所へ任せる」
朝は記録係へ訊く。
「氏名」
「朝倉絹。中央危機調整局、記録補助」
「朝倉さん。旧版を、現行版と混同せず、更新履歴として保管する判断を受けますか」
「受けます。箱名は《更新前原文》。現行版と同じ枝番号、出力時刻、差分箇所を付けます」
「廃棄期限」
「今回の調査終了まで。延長は、私か次の保管担当が氏名で判断」
「公開範囲」
「命令文、時刻、部署、職務署名。個人情報は別」
「受領」
朝倉は、版一と版二を重ねない。
二枚の間に薄い板を挟む。
変更された一行だけを、透明な窓から見えるようにする。
版一。
《夜間の医療従事者は、交代者到着まで待機》
版二。
《夜間の医療従事者は、所属確認と交代見込み確認まで待機》
《到着》が《見込み》へ変わった。
「少し緩くなった」
カナタ。
「待機が終わる条件を、誰が判断するかは増えました」
朝。
「よくなった?」
「まだ決めません」
「役所は、感想にも期限を付ける」
「必要です」
「誰の判断」
「御厨朝。今は、よくなったと評価しない」
朝倉が、その一文も履歴箱へ入れようとする。
「それは命令文では」
「判断履歴です」
「箱が増える」
「捨てると、後で全部最初から分からなくなります」
命令は更新されるたび、前の自分を殺したふりをする。
朝倉は、死んでいない文を別の箱へ移した。
朝は、命令書の番号を見る。
七二。
最後の番号に見えた。
最後である保証はない。
午前九時七分。
竜胆迅は、中央行政回廊へ入る前に、南口の鉄柵を数えた。
三本。
出口は二つ。
開く側は一つ。
「減ってる」
迅が言う。
「何が」
火群七瀬。
「出口」
「昨日は」
「四つ」
「記録あります」
「なら増やせ」
「記録は扉を増やしません」
「知ってる」
「知っていて、毎回言う」
「増えるかもしれない」
七瀬の撮影機は腰高の固定台へ載っている。
左肩を上げない。
右手でクランクを回す。
環玉樹は鉄箱を胸へ抱えていた。
「誰から」
タマキが朝へ訊く。
「私から」
「誰へ」
「迅たちへ」
「何のため」
「七十二本ある可能性のある暫定命令について、発令、更新、受領、拒否の経路を確認するため」
「長い」
「短くすると」
「人を探す」
「命令した人を」
「命令した人だけ?」
タマキは首を傾ける。
「更新した人、受け取った人、断った人も」
「じゃあ、人を四種類探す」
「同じ人が複数の場合があります」
「種類じゃない」
「そうですね」
迅が壁の紙を見た。
「で、何を殴る」
「殴らないでください」
朝。
「何が敵」
「自動更新です」
「機械?」
「機械だけではありません」
「人?」
「人だけでもない」
「一番嫌いな答え」
「私もです」
凱が遅れて来た。
白い外套の裾は短い。
左膝の黒い装具。
胸に王冠も旗もない。
彼は南口の警備員へ、自分の名と役割を告げる。
「獅堂凱。限定協力。官庁群内の移動補助と、現場受領確認。命令権限なし」
警備員が戸惑う。
「そこまで言わなくても」
「言わなければ、後で増える」
「何が」
「権限だ」
迅が凱の左膝を見る。
「階段」
「反復は避ける」
「屋上」
「必要なら昇降機」
「壊れたら」
「一階へ残る」
「珍しい」
「命令ではなく申告だ」
「聞いてない」
「答えた」
七瀬が撮影開始時刻を読む。
「九時十一分二秒。中央官庁群暫定命令調査。公開範囲、命令文、職名、本人が公開を選んだ氏名。非公開、医療、家族、居住地」
「俺の顔」
迅。
「公開済み」
「毎回、確認しろ」
「撮影しますか」
「今さら嫌って言ったら」
「下ろします」
「撮れ」
「受領」
朝は、四人と一人を見た。
迅。
七瀬。
凱。
タマキ。
カナタは放送所。
真琴と巴は法制局で命令文の照合を始める。
イオは明日班から影響人数を集める。
朝は、協力範囲を書いた紙を一人ずつへ渡した。
同じ紙ではない。
迅には、庁舎内の文書搬送と危険時の身体防護。
命令判断権なし。
扉、端末、原本の破壊禁止。
「破壊禁止、多くない?」
「あなた向けです」
「人は」
「負傷させないでください」
「絶対?」
「生命を守るため必要な場合でも、最小限。判断と結果を記録」
「長い」
「署名は」
「しない」
「拒否理由」
「紙に俺を入れると、紙の言うことを聞くと思われる」
「では、口頭受領を記録します」
「それも嫌」
「協力しませんか」
「する」
「矛盾しています」
「人間だから」
朝は《口頭で協力を選択。文書受領は拒否》と書いた。
七瀬には、撮影対象と非公開範囲。
「御厨さんの表情を撮る必要がありますか」
「判断材料へ使わないなら」
「使われ方は、公開後に制御できません」
「では、文書、時刻、本人が公開を選んだ発言。私の顔は、説明責任の場だけ」
「撮影停止の判断は私が持ちます」
「受領」
「撮影停止を、隠蔽と呼ばれた場合」
「誰が停止し、何を代替記録にしたかを残します」
「受領」
凱には、現場受領確認と移動補助。
「以前の地位を使った照会は禁止、とあります」
「王位は終了しています」
「相手が、元王だから答える場合は」
「答えを受け取らない?」